睡眠不足の深刻な代償 認知症や肥満、死亡のリスクも

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睡眠は、全ての生き物が尊重・理解し、屈しなければならない普遍的なパラダイムだ。

しかし、現代社会の急速なペースによりこのパラダイムが尊重されず、他のものが優先されることが多い。技術や人間優先のサービスを原動力とする現在の目まぐるしい経済では、睡眠は世界の数十億人から日常的に軽視されている。

もちろん、睡眠不足に深刻な代償が伴うことを議論した調査は多い。

この問題に関する特に著名な調査の一つが、科学系オープンアクセスジャーナルのネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に昨年掲載された研究だ。同調査は8000人近くの参加者を調査し、睡眠不足は認知症など深刻な認知障害に関連していることを示した。

同調査は次のように説明している。

「50、60歳では、通常(7時間)の睡眠時間と比べ、6時間以下の睡眠に関連して認知症のリスクが上昇していた。また50、60、70歳の間では、短時間睡眠の継続が通常の睡眠時間の継続と比べて認知症のリスクを30%上昇させていて、これは社会人口学や行動、心血管代謝、精神保健の要因とは無関係だった。

「こうした調査結果からは、中年時の睡眠時間の短さが遅発性認知症のリスクの上昇と関連していることが示唆されている」

これには多くの科学的理由が考えられるものの、睡眠と記憶機能・統合の生物学的な相互依存性はこれまで長年の間に繰り返し確立されてきた。そのため、睡眠が認知症と相関関係にあるのは筋が通ったことだ。

さらに、睡眠不足の蓄積は寿命を縮めることも証明されてきた。オープンアクセスジャーナルのヘルスケア(Healthcare)に2018年に発表された調査は、「睡眠時間の減少は、米国で最も多い15の死因のうち、心血管疾患、悪性腫瘍、脳血管疾患、事故、糖尿病、敗血症、高血圧症を含む7つと関連していた」と説明している。

皮肉なことに、睡眠の取り過ぎも死亡リスクの上昇と関連しているため推奨されない。研究者らが、異なる年齢集団における理想の推奨睡眠時間を定量化しようとした理由もここにある。

しかし、こうしたあらゆる資料からは言及する価値のある重要な点が浮かび上がってくる。生理機能は人によって異なり、個人にどれほど睡眠時間が必要かを明確に定量化できる表は存在しないことだ。睡眠の質や生活状況、その他の病歴など多くの外部的要因を考慮すると、同年齢の2人が必要とする睡眠時間は非常に異なるかもしれない。
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翻訳・編集=出田静

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