組織でSFプロトタイピングを行うことの意義
企画を担当したnewQのメンバー(難波優輝・SFプロトタイピング研究、今井祐里・デザイナー、瀬尾浩二郎・プランナー)で、今回のワークショップを振り返った。デザイン思考をはじめとした組織で考えるためのさまざまな方法があるなか、SFプロトタイピングにはどのような特徴があるのだろうか?
難波:はやっているありきたりなテーマからではなく、「感性を共有する」というヤマハならではの視点から未来をシミュレーションできたのがよかったです。ほかでもない自分たちの経験や感じたことから問いを立てることが重要だったと思います。シナリオにはワークショップで出た問いを埋め込むことを強く意識しました。
今井:「そもそも感性って何だろう?」と前提を疑う問いは、素朴でありながら実は私たち自身の生に密着していて、人々がどんなことに悩み、葛藤するのかを考える基盤になります。一直線に課題を解決するための問いを立てるのは本当はとても難しく、機能とか技術の話が中心になってしまい、血の通った人間を置き去りにしてしまうことも少なくないんです。
瀬尾:一般的な企業では、課題解決の“how”を問う機会はありますが、そもそも未来がどうあってほしいのか、その未来で人間が何を考え、大切にしうるのかを意識する機会は多くはないと思います。SFプロトタイピングは、ただ未来の面白いガジェットを想像するのではなく、それによる社会の変革や新たに生まれる物事の意味、価値を問い直すためのツールなのだということを今回のワークショップを通して再認識しました。
難波:「これはSFだからどんな未来の話、感情や欲求の話もしていいんだ」と参加者が安心できる場をつくり出すのに、SFという仕掛けがぴったりだと感じます。互いのビジョンを検討し合うことで、自分たちがどのような未来を目指しているのか、またそこにある課題や探求すべきテーマを探索できる点は、SFプロトタイピングならではのものと考えています。
ニューQ◎セオ商事 哲学事業部。哲学的なアプローチを用いて企画やUI・UXデザイン、編集を行う。クライアントとともに「考え続ける価値のある問い」を見つけ、組織の理念づくりや探究的にプロダクトの開発を続けていくことをサポートしている。哲学カルチャーマガジン『ニューQ』の編集・出版も行う。