そういう社会になった背景を簡単に説明しよう。
20世紀は、社会の構造の中で比較的少数のエリートが大衆を利用していた。つまり労働者の搾取が問題であった。それでも多くの労働者がいなければ経済は回らず、その人達は社会にとって必要な存在であった。また組合を作ったりストライキを起こすことで、多くの労働者が少ない経済力を効果的な政治力に変換することが出来た。
21世紀に入り、テクノロジー、特にデジタルの進化が進むにつれて、エリートの権力や富はどんどん膨れ上がっている。特に2年間以上に及ぶコロナによりデジタル化が加速し、格差はさらに広がった。テクノロジーが可能にするサービスで欲しいものが手に入れば、労働力はそれほど重要でなくなる。つまり、エリートが大衆を搾取する必要がなくなったのだ。
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もちろん日本も例外ではない。20世紀に日本の経済を作ってきた多くの産業は、今は中国など他のアジア諸国に追い越されている。今まで存在していた日本の会社や労働者が、世界で不必要になってきているのも否めない。
必要とされる存在になるには独自の発想が物を言い、先に述べた自立的思考力が重要になってくる。では、どうすればそれをつけられるのか。
親の「生きがいのある仕事」が育てる子どもの自立
学歴は日本でも海外でも重要視される。特に日本の場合、大学どころか、高校や中学、早ければ幼稚園から受験がつきまとうなど、ひどく受験学歴社会に偏っている。しかし今の日本が世界に通用しているか、日本人が必要とされているかと問いかけると、残念ながらそうとは言い難い。なぜか?
それは学歴という形式にこだわり、何が人を本当に育てるかという本質を考えていないからだ。海外に長く身をおいてキャリアを積むと強くそう感じる。
アメリカのジャーナリスト、ビジネス書作家のマルコム・グラッドウェル氏が著書「天才!成功する人々の法則」(原題「Outliers」)の中で、学歴や知能指数が成功を保証するものではないことを、多くの歴史上のデータと事例をもとに語っている。その中から、僕が住むニューヨークの一例を紹介しよう。