分散型金融が抱えている「矛盾」
カールソン・ウィーは、分散型金融という新たな民主主義の世界のボスのようにふるまっている。彼が率いるポリチェーンは、CompoundやUniswap、MakerDAOなどの大手プラットフォームに多額の出資をしており、彼らは各プラットフォームの構造やインセンティブの仕組みの設計に積極的に関わっている。
例えば、Compoundのガバナンスにおいて、ポリチェーンはアンドリーセン・ホロウィッツに次いで2番目に強力な議決権を持っている。
融資の担保要件の引き下げなどの重要な決定を行う場合、ポリチェーンとアンドリーセン・ホロウィッツが手を組めば、どのような方向にも動かすことができる。実際のところ、ポリチェーンは、パラダイム(Paradigm)やベインキャピタル・ベンチャーズ、Panteraなどの大手と並んで、最大規模の分散型プラットフォームの多くを裏で集中的にコントロールしている。
「UniswapやCompoundでは、創業チームの承認がない限り、物事が決まらない」と話すのは、イールドファーミングのロボアドバイザー企業Yearn.Financeの創業者のアンドレ・クロニエだ。「分散化の議論はあるが、裏から手を回さない限り承認は得られない」と彼は話した。
カールソン・ウィーは、DeFiが抱える矛盾をあまり気にしないようにしている。「私は、分散化を最終的なゴールや、ユーザーが求める機能とは考えていない。ユーザーが本当に求めているのはセキュリティの保証であり、それを得る手段として分散化が最適なのだ」
最近の彼の関心は、新たに調達した7億5000万ドルの資金をどこに投入すべきかにある。ポリチェーンは、初期段階のスタートアップ企業への投資に、テーマ別のアプローチを採用しているが、これはVCのベテランであるユニオンスクエア・ベンチャーズのフレッド・ウィルソンから学んだ知恵だという。
急速に変化するクリプトの世界で、DeFiはもはや昨日のバブルになった。カールソン・ウィーは今、NFTやメタバースに次のチャンスを見出している。
「インターネット世代は、服や車よりもアバターやプロフィール写真を大事にしている。人々の暮らしがメタバースの世界に移行すると、NFTが常に身の回りに存在するようになる」と、彼は青い目を輝かせて語る。
「トークンの価格が上がることで、ゲームの規模が実際に拡大するような世界を想像してみて欲しい」とカールソン・ウィーは語った。