経済・社会

2022.02.04 07:00

慎重姿勢に変化? アメリカにおける暗号資産の現在地

松崎 美和子
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Getty Images

ニューヨーク市長は、2022年1月からアフリカ系アメリカ人のエリック・アダムス氏に変わった。

アダムス氏は、選挙中からニューヨーク市を「暗号資産産業の中心地」にすると宣言しており、最初の3回分の給料をビットコインで受け取ると言っていた。その公約通り、先日、市長として最初の給与を暗号資産で受け取った。

厳密に言えば、現行の法律だと、ニューヨーク市は直接市長に暗号資産で給与を払うことはできない。このため、市長は隔週で支払われる給与の約9925ドル(約113万円)を、昨年上場したばかりの暗号資産取引所「コインベース」に持ち込み、イーサリアムとビットコインに交換して受け取ったという。

昨年までアメリカ政府は暗号資産に対して慎重な姿勢をとってきた。しかし、このニューヨーク市長のエピソードは、それが「雪解け」に向かっていることを指し示す象徴的な出来事かもしれない。

昨年までの慎重な姿勢に対して変化が


暗号資産に対しては、昨年までアメリカでは「冷たい北風」が吹いていたと言ってもいいかもしれない。

政府機関であるアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS=アメリカ国税庁)は、国民の暗号資産運用を把握するため、2019年分の申告から税務申告書に「私は仮想通貨を買ったり、受け取ったり、交換したことがあります」というチェック欄を設けた。今年で3回目になるが、暗号資産の収益も課税対象になるとIRSのサイトでも明示されていた。

また、フェイスブック(2021年10月よりメタ・プラットフォームズに改称)が主導してきた新たなデジタル通貨の発行をめざす「リブラ(のちにディエムと改称)」構想は、国家の徴税権や通貨発行権を飛び越えたアイデアであり、さらにマネーロンダリングに利用される懸念も高かったことから、各国の金融当局から睨まれることとなった。

その結果、フェイスブックは昨年5月に軸足をスイスからアメリカに移し、根本的な方針転換をせざるをえなくなった。当初の構想は実質頓挫したと言えるだろう。フェイスブックは、公的ネットワークが整うまではアメリカのシルバーゲート銀行と提携し、林立している通貨と連動するステーブルコインの1つとしてディエムを扱うこととした。

ブルムバーグ・ニュースによれば、昨年10月に社名変更した同社は、「ディエム」のプロジェクトそのものをシルバーゲート・キャピタルに売却することを決めた。

2021年5月、米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は「消費者や企業をリスクにさらす可能性がある」と述べ、暗号資産に対して慎重な姿勢を示した。
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文=高橋愛一郎

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