暗号資産XRPが実現する国際送金のオンデマンド流動性とは

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ブロックチェーンや暗号資産はさまざまな産業で変革を起こすと期待されている。その中でも、国際送金はブロックチェーン技術によって最も大きな変化を遂げる分野だとされている。今回の記事では、国際送金の現在の課題、そしてブロックチェーンが具体的にどのような変化をもたらすのか、に焦点を当てて見ていきたい。

その変革を一言で表すと、「価値が情報と一緒に動く世界」の実現である。米リップル社が世界で展開し、最近日本でも提供を開始した、暗号資産XRPによる「オンデマンド流動性」によって、いかにそのような世界が実現し始めているか事例とともに解説したい。

変革が求められる「国際送金」システムの歴史


国際送金は、19世紀後半からの国際貿易の急激な成長に追随する形で発展を遂げた。中央銀行が最終的な銀行間の決済を行う国内送金に対し、国家間での送金ではそのような中央的な機関が存在しないため、銀行は海外銀行との間で口座(コルレス口座)を開設し、その口座を通して資金振替を行うことで国際送金の決済を行っている。

このコルレス口座を通した送金を効率化するための仕組みとして、1970年代にSWIFT(国際銀行間通信協会)が標準的なフォーマットによる送金のメッセージングサービスを展開し始めた。中小の銀行が数々の海外銀行とコルレス契約を結ぶことは、業務的にもビジネス的にも非効率であるため、海外銀行とのコルレス契約は限られた大手の銀行に集約されている。

そのため、多くの国際送金は複数の金融機関を経由する形で行われることになり、それがコストが高く時間もかかる原因の一つとなっている。

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この仕組みは50年ほど前、大企業が国際貿易の主役で、国際送金といえば低頻度で高額のバッチ型の送金が当たり前であった時代に作られたものだ。しかし現代は、eコマースが怒涛の成長を遂げ、個人の国家間の移動も増加する中、高頻度・低額の国際送金の比率が劇的に高くなってきている。世界銀行の統計によると、中小企業や個人による送金額はここ40年で20倍にも増加しているという。

にもかかわらず、数十年も前に構築された国際送金の基盤がいまだ使われており、現代の「オンデマンド」で「低コスト」な送金ニーズには応えられていない状況となっている。現在、国際送金の全世界の平均コストは送金額の7%であると言われており、一部の途上国では20%〜30%であることも珍しくない。先進国の中では、日本は最も国際送金のコストが高い国であり、平均コストは10.5%にも上る。

高コストな国際送金の本当の理由は、価値と情報の連動


国際送金が高コストになる最大の要因は、コルレス銀行を経由する国際送金において、価値と情報の動きがリアルタイムに連動していないことにある。送金指示情報を含むメッセージが複数の金融機関の間をバケツリレー型に転送される中で、実際の決済(価値の移転)は各金融機関の間の口座にあらかじめ準備された資金の振替によって行われ、つぎはぎのプロセスがリアルタイムに同期されていないのだ。
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文=吉川絵美

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