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テクノロジーとアジア関連の記事を担当

藤本真衣(撮影 Kevin Abosch)

「ミスビットコイン」の愛称で知られる起業家、藤本真衣は、暗号通貨(仮想通貨)業界ではその名を知らぬ者がいない有名人だ。彼女とビットコインの出会いは、今から約10年前の「鳴り止まない電話」にさかのぼる。

東北を大震災が襲った2011年の年末、藤本はオンライン英会話講座で仲良くなった女性講師に会うため、神戸から上京していた。会食の途中でスマホが何度も鳴り、「またアイツだ」と講師は面倒くさそうに言った。

「昔から知り合いのガイジンが、ビットコインとかいうわけの分からないものを熱心にすすめてくる」と、放置していたが、その後も着色音は鳴り続け、ついには根負けして電話をとった。聞けば、相手は2人がいる店のすぐそばに来ているという。

店に来た彼は、「インターネットから生まれた国境を超える通貨」という得体の知れないテクノロジーの魅力を早口の英語でまくしたてた。ほとんど理解できなかったが、藤本は「手数料がほぼゼロで海外に送金が出来る」という点に魅力を感じ、連絡先を交換した。

それから10年がたった今、GMOなどのインターネット大手の暗号通貨事業の顧問を務め、世界的取引所のバイナンスと合同でチャリティ企画を運営する藤本は6月、国内最大規模のNFTのカンファレンスを主催し、国内外からスピーカーを招いた。彼女をこの業界に引き入れた電話の主こそ、後に「伝説のビットコインの伝道師」と呼ばれることになる投資家のロジャー・バー(Roger Ver)だった。

チャリティプロジェクト頓挫を経て


「あの頃は、私も含め誰もビットコインなんて知らなかった。友達に話すとマルチ商法か新興宗教のように思われた」と、藤本は笑う。神戸の女子大学を2年で中退した彼女は、その当時一世を風靡したスマホアプリ「美人時計」の派生版である「キッズ時計」の業務を受託しつつ、ビジネスのアイデアを探っていた。

大学時代から家庭教師の派遣ビジネスにのめりこんだ藤本は、キッズ時計で世界の子どもを支援するチャリティ企画を立ち上げようとしていたが、その際に課題となったのが、海外送金の手数料の高さだった。

暗号通貨を使えば銀行を介さず、手数料をほとんどかけずに海外送金ができるという利点は、その当時テクノロジーの知識が皆無だった彼女にも十分に刺さった。その後も日本でビットコインの「布教活動」を続けていたロジャーを、神戸のキッズ時計のオフィスに呼び寄せ、プレゼンをしてもらうと、会社の幹部はこのテクノロジーを慈善事業に取り入れることにした。しかし、さらなる難題に直面する。

2009年にナカモトサトシという謎の人物がビットコインを発案してから、まだ2年ほどの当時、資金を送ったとしても、それを受け取るウォレットを使いこなせる人はごくわずかだった。結局、チャリティプロジェクトは頓挫し、「まずは、ビットコインの魅力を世界に発信していくことが必要だ」と考えた彼女はインフルエンサーとしての活動を開始した。

取材・文=上田裕資

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