中国企業は、中国本土での成功を欧州でも再現しようとしている。中国におけるEV売上は、2021年にほぼ3倍に増加した。SGMW(上汽通用五菱汽車)、 BYD(比亜迪)、Li Auto(理想汽車)といった大手企業の販売台数はますます増えている。そうした企業は拡大し、中国における生産とマーケティングを支配し始めている。
中国企業の販売するハッチバックの平均価格がわずか4400ドルであるのに対し、平均的なテスラ車の最低価格は4万5000ドルだ。政府による助成金と税の優遇措置にもかかわらず、テスラ車の価格は相変わらず高額のままで、それがさらなる国際的競争の扉を開いている。
米国テキサス州の「ギガテキサス」と、ギガベルリンでの生産が始まれば、テスラは、2022年に最大150万台を欧州に供給できる見込みだ。しかし、その価格は中国企業を大幅に上回る水準になる可能性が高い。
ドイツにおけるテスラのギガファクトリーは、欧州経済が炭化水素燃料から加速度的に脱却する近未来を予兆している。だが、その転換にリスクと難問が伴なわないわけではない。
もちろん、EV市場が強力になるのは、欧州のエネルギー安全保障にとってはよいことだ。中国のEV企業との競争の可能性はあるものの、欧州のEV市場が拡大すれば、サウジアラビアやロシアなどの、評判のよろしくない炭化水素燃料輸出国への依存を減らすことができる。
とはいえ、欧州がベースロード電力生産を強化してエネルギー危機に対応できなければ、EVメーカーは、欧州での販売拡大と二酸化炭素排出量の削減という点で、不利な立場に置かれることになるだろう。