SF的思考をビジネスに活かす「Sci-Fiプロトタイピング」とは?

Getty Images


入山:ここからは、「Sci-Fi思考をどう活かすか?」というテーマでお送りしたいと思います。Sci-Fiとは何でしょうか?

田丸:サンエンス・フィクション、いわゆるSFです。Sci-Fi思考とは、そういったSF的な空想やアイデアをビジネスに活かしていけないかという取り組みだと個人的には解釈しています。ちなみに、ショートショートは本来SF以外のジャンルも対象なので僕はSFに特別詳しいわけではないのですが、ショートショートにおけるSF的な側面を活かせればと思い、日頃から企業などでも発想支援のワークショップを開催させていただいたりしています。

入山:実は私も奥田さんも、田丸さんの「Sci-Fiプロトタイピング」のメンバーです。「Sci-Fiプロトタイピング・プロジェクト」というのは、未来を空想・妄想する時に、てっとり早いのは、SF的に考える事です。

田丸:僕は、皆さんとディカッションしていくなかで、「絶滅アカデミー」というショートショートを書きました。「絶滅」というキーワードが皆さんの間から挙がったからです。一見するとネガティブな言葉ですが、じつは生物の繁栄は絶滅と切っても切り離せない関係にあるのではないか、と。

奥田:私が地域で活動していくなかで、おばあちゃんのコミュニティー「ふれあいカフェ」を見て気が付いた事があります。そこには30人女性がいるのに、男性は1人しかいない。70歳以上になると、一気に男性が表に出なくなるんです。これまでは、30~40年間現役でバリバリ生活や仕事をしてきたのに、その後の30~40年間は、社会に出て来れない。つまり男性は社会的に一定の年齢で絶滅してしまう。

田丸:僕は、人類という種は絶滅を疑似体験できる地球史上で最初の生物なのではないか、と考えました。そして、VRなどの技術を使って自らの絶滅を疑似体験することで、繁栄へとつなげることができるのではないか、と。そんな仮説のもと、ショートショートを執筆しました。

入山:人間でないと妄想を始めとした疑似体験が出来ないと思います。

田丸:執筆を通じて空想や妄想は改めて大切だなと感じましたし、このプロジェクトそのものの意義も実感しました。

入山:では、未来を考える時に、SF的な考え方を使っていくのは、どういう使い方や効能がありますか?

奥田:今ある技術を広げていったら、どんどん売れると思いがちですが、将来起きる事を仮定した場合、それに相応しい技術はないだろうかという事を、妄想と現実の境目として沢山出していくのが、このプロジェクトの大切なところだと思います。

入山:少し遠い未来は、妄想を働かせるとこういう事が起こる、と考えるのですね。

奥田:あと、その上で今ある技術を使って事業計画を立てるのも大切かと。
次ページ > 妄想からスタートしたテスラ

文=中村麻美

ForbesBrandVoice

人気記事