入山:今、最も注目されている会社は、テスラですが、「人類は、このままだと死滅する」という強い妄想を持っていたわけです。死滅するから、二酸化炭素を減らすしかないと考えたわけで、電気自動車が生まれた。また、人類は、死滅するから地球から脱出しようとも考えた。だからスペースXという会社が設立された。この会社には、高い株価が付いている。株というのは、未来への投資ですが、日本の会社は、未来に投資しないで、目の前の事に一生懸命になってしまう傾向が強いですよね。
奥田:もっと性能良い車、と考えた時、私はスマホに乗りたいと考えました。どこに出掛けるにも、スマホひとつしか持たない生活となると、ではスマホを大きくしてスマホに乗って出掛けたいと思ったのです。その考え方は、既に動き始めていて、アップル社が今後、車をリリースすると聞きました。
ただ、会社の会議では、空想や妄想を発言しにくいのが現実です(笑)。ですので、私は、スタートアップ企業のメンターをやっているのですが、「あなた達の5年後は、こうなっていますよ」とアドバイスするのも、空想や妄想から発想しているものも多いのです。
入山:では、空想や妄想を浸透させていくには、どうやったらいいでしょうか。
奥田:日本人にも、空想や妄想といった発想が向いていると思います。
田丸:僕も同感です。日本人は、常識やルールという名のヘルメットを被っているだけなので、たとえばメソッドなどの力を使って外してあげると、柔軟な素地が現れます。仮に1回目でうまくいかなくとも、何度も繰り返すことで、誰でも空想のアクセルを踏み込んでいけるようになると思っています。
入山:僕も実は日本人は、SFに向いていると思っていました。手塚治虫の文化ありき。「宇宙戦艦ヤマト」「ガンダム」「ドラえもん」は、全て空想の世界。日本人は、そもそも空想能力が高いです。
田丸:ですです!日本人は、そもそも空想能力が高い。僕は、「日本人は、空想ネイティブだ」と思っています。
入山:常識のヘルメットを外せば、いかに、「大空想実現大国」になるか、ですよね。
「常識のヘルメットを外す」。これさえ実行すれば、どんどんイノベーションが進む予感がしました。
長岡里奈(以下、長岡):ロート製薬には社内ベンチャー制度がありまして、目薬容器からリサイクルサングラスを作るというプロジェクトをスタートし、2021年3月に合同会社になりました。この「アイフォースリー」では、「全ての人を健康にしたい」がテーマです。
インドに足を運んだ時、自分は日本で何不自由なく暮らしているけれど、インドでは若いうちに視力を失ってしまう現実を目の当たりにして心を痛めました。一方、ロート製薬の工場で、目薬容器の廃プラスチックが出ているのを見ていて。「健康問題」と「環境問題」。この2つをどうにか解決出来ないかと考えた結果、廃プラスチックで目を守るサングラスを作りました。そこで得た利益で、発展途上国の方々に白内障手術や視力検査を受けられる支援活動をするべく準備中です。
奥田:捨てられる目薬の容器が10年後20年後どうなっていくのだろうと考えていくのが大切だと思います。