経済・社会

2022.01.05 06:00

湾岸諸国の「オイルマネーばらまき政策」に世界銀行が警鐘


そんななかで、湾岸諸国の政府が職員の給与や福利厚生に注ぎ込む膨大なカネに焦点を当て、こうしたやり方がはらむリスクについて警告するリポートを、世界銀行が公開した。

GCC加盟国の大半では、公共部門の規模こそ国際的基準の範囲内に十分収まっているものの、この部門に費やされるコストについてはそうは言えないケースが多い。これらの国々の公務員に支払われる賃金は、民間部門の想定賃金よりも50~100%割高だと世界銀行は指摘している。その結果、公務員に支払われる賃金総額は、国の経済規模と比較して膨大な額に達しているという。

例えば、クウェート政府の次年度予算を見ると、歳出の実に半分以上が、給与あるいは福利厚生に費やされており、その総額は126億クウェート・ディナール(約420億ドル)に達する。この金額は、2013年の時点ではわずか48億ディナールにとどまっていた。世界銀行によれば、クウェートの公務員のうち3分の1近くが、「人余りの兆候があるにもかかわらず」ここ5年間に雇われた人員だという。

一方、クウェートの民間部門労働人口は、2020年時点で外国籍の人々が96%を占め、自国民はわずか4%だった。これと対照的に、公共部門の労働人口は、75%がクウェート国籍、25%が外国籍だった(クウェート中央銀行調べ)。

この地域の他の国々も、クウェートと似た状況にある。

高まる財政圧力


こうした賃金総額の高騰により、政府予算にかかる圧力は高まっている。バーレーンやオマーンのような、保有する天然資源が比較的少なく、財政の余力が限られている国々では、この傾向が特に顕著だ。

湾岸諸国にとって、こうした諸事情は、より幅広い経済計画を策定する際の課題となっている。これらの国々はどこも、原油と天然ガスだけに頼る経済から脱却し、多様化を図りたいと公言している。また、民間部門の活性化を図り、自国民が民間企業での仕事に就くように促したいとの意向もある。だが、公共部門に対して高給が提示され、労働時間も短縮傾向にある現状では、自国民に対して、公共部門以外での職を探すよう促すのは容易ではない。

こうした状況の是正は、一筋縄ではいかない。世界銀行は湾岸諸国の政府に対して、賃金や手当の削減を含む「包括的な公務員制度改革の措置」を実行する必要があると提言している。

だが、改革に踏み切れば、より広範な社会政策についても疑問視する声が上がり、政治的・社会的な圧力が高まる。特に、現状は石油収入が堅調で、わざわざリスクをとる必要がないだけに、湾岸諸国の政府としては、こうした緊張が高まる事態は避けたいはずだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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