湾岸諸国の「オイルマネーばらまき政策」に世界銀行が警鐘

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公務員は世界各国でとかく厚遇されがちだが、ペルシャ湾岸諸国の政府職員ほど破格の待遇を享受しているケースはまれだろう。この地域の公務員の給与は非常に高く、ワーク・ライフ・バランスについても配慮が行き届いている。

アラブ首長国連合(UAE)の政府当局が2021年12月、公共部門職員の1週あたり労働時間を4日半に短縮すると発表したのも、こうした厚遇ぶりを示す最新の例だ。UAEに7つある首長国の1つ、シャルジャでは、さらに労働時間の短縮が進み、週4日働くだけでよくなる。

バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAEからなる湾岸協力会議(GCC)に加盟する専制主義の国々では長いあいだ、自国民に対して、公共部門における高給の職を気前よくばらまく施策が社会政策の一部をなしてきた。国民は仕事に加え、医療や教育を無料で受けることができ、住宅購入の資金や燃料費、水道光熱費についても補助金を受け取れる。しかも、税金は課されるとしてもごくわずかな額で、まったく課されないケースもある。

これは、石油から得られる莫大な富、いわゆるオイルマネーを国民に分配する1つの方法ではある。国民は、こうした恵まれた暮らしと引き換えに、社会に対する要求(例えば、民主主義をはじめとする社会改革への要求)があったとしても、それを表立って口に出さないことが期待されている。だが、長期的に見た時に、公共部門の職に莫大な賃金を支払うこのやり方が、どれだけ持続可能かについては疑問の声もある。

ここ数カ月の原油高によって、これらの国々の国庫はさらに膨らんでいることから、湾岸諸国の政府にとって、労働時間を短縮しつつ他の福利厚生を維持することはいっそう容易になっている。オックスフォード・エコノミクスの調査結果によると、2022年に2021年以上の経済成長を遂げると予測される地域は世界でも2つしかないが、GCC圏はその1つだ(もう1つは、東南アジア諸国連合=ASEANの圏内だ)。

政府職員の好待遇は持続不可能


だが、こうしたばらまき型社会政策に起因する「財政への圧力」は、昨今の原油高によって払拭されたわけではなく、こうした制度は早晩維持できなくなる危うさをはらんでいる。特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のさらなる感染拡大によって、国家の体力を奪うロックダウンが再び実施された場合や、原油価格が再び急落した場合には、その危険性が高まる(原油価格急落は、仮定の話というよりは、時間の問題というのがより的確だろう)。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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