ビジネス

2021.12.27 07:30

紀ノ国屋やサミットも販売。農家の創造性を活用する「仕掛け」

インファーム共同創業者たち。左端が最高技術責任者(CTO)のガイ・ガロンスカ

国連は、2050年までに世界人口が90億人を超えると予測。食糧の確保が急務となっている。ある起業家たちが育てた「都市型農場」と、そのデータが世界を危機から救うかもしれない。

将来的に、都市部へ流入する人口は増えると予測されている。遊休スペースをいかに効率よく利用し、食糧を賄うかがスマートシティの課題になるだろう。「究極の地産地消」を掲げる、独ベルリン発の都市型垂直農業プラットフォーム「Infarm(インファーム)」は、2013年の創業以来、都市部を中心に急成長し、日本でも大手スーパーに栽培ユニットを設置している。2021年12月中旬には、企業評価が10億ドルを超える未上場企業、いわゆる“ユニコーン”に仲間入り。同社の共同創業者兼CTO(最高テクノロジー責任者)のガイ・ガロンスカに垂直農法の可能性について聞いた。


──起業したきっかけは。

利用者に自分の庭や、自然のある所へ行き、そこで直に野菜を収穫するのと同じ体験をしてほしいと思ったのがきっかけだ。人類に古くから根差す感覚だと思う。

──インファームの特徴とは。

水耕栽培装置(ファーミングユニット)を用いた屋内型垂直農法で野菜やハーブを栽培・販売している点だ。2通りの方法がある。

1つ目が、スーパーマーケットやレストランなどで栽培~収穫・販売している小型ユニットだ。これは、IoT(モノのインターネット)で室温や肥料、水、空気を管理し、品種ごとに最適な状態になるよう内部環境を常時自動的にアップデートしており、ユニットはクラウドに接続されていて、ベルリン本社で24時間遠隔で管理している。

日本では、紀ノ国屋やサミットの一部店舗内にユニットを設置しており、消費者はガラスケース越しに栽培~収穫・購入の過程を実際に見ることが可能だ。

2つ目が、「インファーム栽培センター」に設置した10m超のユニットで、自動化により効率よく大量の野菜を収穫できる。

──2013年の創業以降、急成長してきた。

起業家というとビジネスをイメージしがちだが、根底には「何かを変えたい」という欲求がある。インファームも同じだが、農業やフードシステムに留まらず、さらにその先を目指している。

水耕栽培や屋内型垂直農法についての研究結果もワークショップでシェアし、還元してきた。それが「レストラン内に農場を作りたい」という最初の顧客につながり、現在の「Farming-as-a-Service(サービスとしての農業)」が生まれた。
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インタビュー=井関庸介 編集=森 裕子 写真=Courtesy of Infarm

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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