億万長者の厳しい世界について執筆

アップハーベストのトマト栽培 (c)AppHarvest

「植物工場」とも呼ばれる施設で野菜などを栽培する屋内農業には現在、数十億ドル規模の資金が流入している。売上実績は限定的だが、この産業は一種の「変曲点」に達しつつある。

米調査会社ピッチブックによると、2020年の1年間にこの業界に投入された資金は、全世界で19億ドルという驚くべき額に達した。これは、それ以前の10年間でこの業界が調達した資金の合計額を上回る数字だ。

そして今、室内垂直農法を手がけるいくつかの企業が、いまだ赤字状態ながら多額の資金を調達し、株式公開に向けた準備を進めている。2021年2月には、ケンタッキー州を拠点として温室での野菜栽培を手がけるスタートアップ、アップハーベストがナスダック上場を果たした(同社は4月、人工知能とロボット工学を農業に応用するスタートアップ「Root AI」も買収している)が、それに続いてエアロファームズなどが上場を目指している。

非公開企業各社への投資も増えている。ニューヨーク市を拠点とするバワリー・ファーミングは、5月末に3億ドルの資金調達を成功させ、その評価額は23億ドルに達した。


(c)Bowery Farmingの野菜

これについて、「ひどく過大評価されているように思う。最新ラウンドでのバワリー・ファーミングの評価でさえ、ショッキングなほどに高かった」と指摘するのは、投資家で、非営利の農場「Stone Barns Center」の共同設立者でもあるデビッド・バーバーだ。それでもバーバーは、バワリー独自の栽培管理システムを評価し、同社への投資を決めたという。

「過大評価ではあるが、その一方で、アプローチできる市場の規模は非常に大きい。このセクターが熱気を帯び、注目を集めているのは、食料の安全性への関心、そして、どういう環境条件下であっても人々に食料を提供できる能力をどのようにして開発するか、という問題意識からだろう」とバーバーは語る。

屋内農業ビジネスへの熱狂的な投資ブームは、2021年に入っても継続中だ。デットファイナンス(借入や社債発行による資金調達)に加えて、他の資金調達によりスタートアップが手にした金額は7億1500万ドルにのぼる。さらに米国では、SPAC(特別買収目的会社)を活用した上場が、アップハーベストに続いて2件実施される予定で(エアロファームズとローカル・バウンティ)、欧州で3件目の上場の動きがあるとも報じられている。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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