ビジネス

2021.12.27 07:30

紀ノ国屋やサミットも販売。農家の創造性を活用する「仕掛け」


──テクノロジーと融合させた経緯は?

時代のニーズや条件と合致した。LEDやクラウド・コンピューティング技術が安価になり、農薬に対する不安と相まって、スマート・ファーミングへの需要が高まっていたのだ。モジュール型農場に自動化のプロセスを組み入れることは、経済性の観点からも重要だった。テクノロジーを自社開発していることも当社の急激なスケーラビリティ(拡張性)と、イノベーションに寄与したのではないか。

──IoTで収集した野菜の栽培データは、どのように使われるのか?

極めて重要な点だ。屋内農法に限って言えば、当社のテクノロジーのバックエンド層と、そこに集まるデータ、そしてそれが秘める可能性は正しく理解されていない。我々は膨大なデータを収集している。1つ目が肥料、水、温度、湿度、二酸化炭素排出量など環境要因に関するもの。2つ目が成長率や重量、色、光合成作用、病気など、野菜のできについてのものだ。両者の相関関係がわかれば、そこからフィードバックループが形成され、システム全体で強化学習する。それによって野菜の品質や生産量、育成に使うエネルギーを最適化できる。つまり、より少ないコストでより質の高い野菜の大量生産が可能になるのだ。また、データは温室栽培や伝統農法にも適用できるはず。途上国でも役立つだろう。

──国連の世界人口予測では、2050年までに世界人口が90億人を超える。

垂直農法は人類を食糧危機から救う可能性を秘めているし、その頃には人口を賄うだけの野菜を育てられる可能性はある。ただ、唯一の方法ではない。やはり、データではないか。それを使って既存の農家が農薬や化学肥料の量を減らしながら、品質や収穫量を上げていくことで、目標を実現できるはずだ。


インファーム◎2013年創業、屋内型垂直農業企業。イスラエル出身のエレツ(CEO=最高経営責任者)とガイ(CTO=最高技術責任者)のガロンスカ兄弟、オスナット・ミカエリ(CBO=最高ブランド責任者)の3人が独ベルリンで創業。現在、日本を含め、世界11カ国に1400以上の水耕栽培装置(ファーミングユニット)を展開している。

インタビュー=井関庸介 編集=森 裕子 写真=Courtesy of Infarm

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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