テクノロジー

2021.12.26 10:00

「この施策、本当に効果ある?」を検証。国際協力事業で普及する衛星データ


国際協力における衛星データ利活用の未来


せりか:衛星の打ち上げ機数はどんどん増えていて、画像の撮影頻度も上がってきています。さらに、画像の解像度も良くなってきていますよね。事業の評価には、どのくらいの撮影頻度と解像度があると、十分だと言えそうですか。

石本:農作物の生育を調べるなら、週に1回程度画像を撮影する必要があります。先ほどのマラウイの事例のように、森林の面積を調査するのであれば、年に1回画像を撮影できれば良いです。

でも、光学衛星の画像は雲がかかるとその下は見られなくて、たとえば年に1回しか撮影の機会がない場合、その1回の画像に雲がかかってしまうと、該当の年のデータは取れなくなってしまいます。なので、画像の撮影頻度は多ければ多いほど、データを取得できるチャンスが増えるわけです。

画像の解像度については、何のデータを取得するかにもよりますね。特に農業分野では高解像度の衛星データが必要です。地上分解能10m以下……できれば5mの画像が手に入れば、圃場単位で農作物の生育状況を調べられるでしょう。



途上国に農業の技術を移転する事業では、対象となる地域の全ての農家を支援することは難しいので、いくつかの農家に絞っています。ところが、効果を検証するときは、地域全体の農地の生育状況の平均値しか算出することができません。なので、実際のところは効果を水増しして評価しているかもしれないですし、逆に効果を低めに評価してしまっているかもしれないのです。

高解像度の衛星データを使えるようになれば、対象の農地だけに絞ったデータが得られるようになるので、より正確に事業を評価できるようになります。

せりか:今はまだ、高解像度の衛星データは高額かもしれませんが、衛星の機数が増えたり、地上との通信の機会が増えたりすれば、自ずとデータの価格は下がっていきそうですね。

石本:そうですね。それから、私が担当するのは事業が完了した後の事後評価が中心ですが、衛星が撮影したデータをリアルタイムにダウンロードできるようになれば、事業を実施中のモニタリングにも使えるようになるかもしれません!

進行状況をずっと現地でモニタリングしなければならなかった事業も衛星データでリアルタイムに様子を見られるようになれば、現地へ渡航する回数も減らせますし、その分の人的リソースをほかに充てられるでしょう。

せりか:なるほど。それはかなり生産性が上がるのではないでしょうか。リアルタイムでの観測ができるようになれば、衛星データの利活用はさらに広がりそうですね。

石本:今回はカンボジアの小水力発電所の建設事業とマラウイの森林保全事業、そして農業の支援事業を紹介させていただきましたが、ODA(政府開発援助)事業には様々なものがあります。衛星データが使えれば、活用できる場面は多いと思います!

せりか:国際協力の現場ではもちろん、農業や建設業をはじめとする業界でも、衛星データは業務の生産性を向上させてくれそうですね。ありがとうございました!

宇宙飛行士との対談シリーズ第二弾のゲストは、メトリクスワークコンサルタンツの石本樹里さんでした。石本さんのお話から、衛星データは事業を評価する際に必要な情報の選択肢のひとつになっていることがわかりました。撮影頻度や解像度が向上することで、衛星データでできることの幅は広がっていきそうです。

衛星データの利活用事例について紹介した第1弾と本記事に続く、次回第3弾のテーマは「宇宙開発の必要性」です。せりか飛行士たちの熱い議論をお楽しみに。

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