キャリア・教育

2021.12.22 07:30

ブロックチェーン業界はジェンダーギャップを解消できるか


ブロックチェーン業界におけるジェンダー・ダイバーシティの課題


吉川:統計によると、ブロックチェーン業界ではジェンダー・ダイバーシティの欠如が問題となっています。このことは問題だと思いますか?ブロックチェーン業界で働く女性がまだまだ少ないのにはどういう理由があると考えていますか?

キャサリン・チュウ:人口比率の半分を占める女性が会社にいないとなると、物事を適切に認識し、捉えることができないと思います。異なった視点を持つ人が会社組織にいなければ、多くのビジネスチャンスを逃すことに繋がりかねません。ビジネスの世界においては危険なことだと考えます。

シャーリー:前述の調査が行われた2018年時点では、ブロックチェーン業界において女性が占める割合は低かったと思いますが、ここ数年で状況が改善していることを認識することも重要です。しかし、さらなる改善の余地があることも間違いありません。私たちはブロックチェーン業界で働く女性リーダーとして、自らの経験を広く共有することからはじめ、影響力を高めていく必要があると思います。

キャサリン・ウン:特にアジア圏では、平等な機会の提供が非常に重要であると思います。私の知る限り、ブロックチェーン企業の女性創業者は片手で数えられるほどしかいません。これは、アジアにおいて組織文化がどのように生まれ、育まれているかに起因します。TZ APACでは、ダイバーシティ(多様性)、イコーリティ(平等性)、インクルージョン(包摂性)を奨励しています。国籍、人種、セクシュアリティなどを尊重し、パフォーマンスに応じて社内で平等に機会を提供する仕組みを設けています。インクルージョンと帰属意識の向上にも継続的に取り組んでおり、私たち社員のDNAに根付かせたいと考えています。私自身も常に多様性を意識しながらチームを作ってきましたし、このような考え方が昨今より主流になってきていることを嬉しく思っています。

吉川:素晴らしい取り組みですね。金融サービスやテクノロジー業界は伝統的に男性が圧倒的に多いですが、ブロックチェーン業界はまだ立ち上がったばかりの新しい領域です。そのため、今こそ多様性の強化に取り組む必要があります。ダイバーシティを促進するためには人材の確保が不可欠です。ブロックチェーン業界に女性が少ない原因は何だと思いますか?

私は、「ブロックチェーン関連の仕事に興味はあるが、この分野について十分な知識があるか自信がない」という相談を女性の方から受けることがよくあります。ブロックチェーン業界にはエンジニアなどの技術的な仕事だけでなく、マーケティングや人事など、さまざまな職種があることも認識いただきたいと思います。そうした認知向上がジェンダーギャップ解消の第一歩になると思います。

キャサリン・チュウ:今の話を聞きながら、とある映画を思い出しました。女性は自分の意見を主張せず、失敗しないように、ひとつひとつ慎重に行動するように教育されているといった内容の映画です。こうした教育の結果、女性は成功するために必要なリスクを取ることを避けてしまいがちです。私はこの映画と真逆のことをしようと決めました。何もためらわずに自分が思うままに行動することを心掛けています。挑戦し何度か失敗もしましたが、自分がベストを尽くしたと納得ができ、良い経験ができていると感じています。このような考え方は、私にとって大きな助けになったので、他の人にとっても役立つ考え方ではないかと思います。

シャーリー:まったく同感です。ブロックチェーン業界はスピード感が速く、立ち上がったばかりの領域なので、この業界では働いている誰もが日々学んでいます。そのため、失敗してもすぐに次と切り替えて進んでいくことができます。

キャサリン・ウン:吉川さんの「自信」に関する話に戻りますが、特に東南アジアでは、文化的に、女性はおとなしい性格であることが望ましいと考えられています。私が銀行で働き始めたばかりの頃、男性と同じ土俵に立つためには過剰な努力を必要とする社会構造になっているということに気付きました。私には女性がリーダーになることを支持してくれる上司がいたおかげで、自分自身の意見を持つことができ、積極的になることができました。また、自分の意見を主張し、「ノー」と言う大切さも学びました。

吉川:多様性を理解して推進するリーダーシップチームを持つことは、この業界全体を考えても非常に重要なことだと思います。リップルでも、CEOとリーダーシップチームが、職場における多様性を向上させるためのダイバーシティ&インクルージョンプログラムを優先事項に掲げ、積極的に推進しています。
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文=吉川絵美

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