ブロックチェーン業界はジェンダーギャップを解消できるか

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暗号資産やブロックチェーンは、未来の金融システムを再定義すると言われている。しかし、テクノロジーと金融という、従来男性比率の高い2つの分野が交差するこのブロックチェーン業界において、ジェンダーギャップは大きな課題となっている。日本のテクノロジー系カンファレンスの登壇者一覧を見ても、いまだに男性が中心の世界であることがわかる。

LongHash社が行った調査によると、ブロックチェーン関連のスタートアップ企業における女性の従業員比率は14.5%で、管理職に至ってはわずか7%であった。調査対象となったスタートアップの100社のうち、女性のリーダーが1人もいない企業が78社に上ることも明らかとなった。

ブロックチェーンが金融業界に新たな価値をもたらし、急速な変革をもたらしている今、女性がこの業界で新たな活躍の機会を模索するにはまたとない絶好の機会だ。より多くの女性がブロックチェーン業界に参画できるようにするには何が必要だろうか?

私はアジア地域のブロックチェーン分野で活躍する女性リーダー3名にインタビューを行う機会を得た。彼女たちがこの業界で働くことになったきっかけや、業界のリーダーとして現在の課題をどう捉えているかについて詳しく聞いた。


左上から時計回り:
吉川絵美(筆者) リップル コーポレート戦略及びオペレーション担当バイスプレジデント
キャサリン・ウン氏 TZ APAC APACマーケティング部長
キャサリン・チュウ氏 Polygon グローバルコミュニケーション担当
シャーリー・クオック氏 OKEx インターナショナル・ビジネス・ディレクター


ブロックチェーン業界で働き始めたきっかけ


吉川:まず、私たちがブロックチェーン業界で働くことになったきっかけと、現在の仕事内容についてお話できればと思います。私自身の話をすると、大学卒業後、金融業界でキャリアをスタートし、NYのウォール街で勤務していました。2008年の金融危機の際、まさにその渦中にいました。その経験から、既存の金融構造を持続可能なものにするにはどうすべきかを考え始め、その後、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で勉強し、知識を深めました。これからは技術革新の時代になると考え、同時期に工学系の学部でもコースを履修して、最新の技術を調査・模索していました。その時にビットコインに出会い、大きな衝撃を受けました。

HBSを卒業後、シリコンバレーのスタートアップ等での経験を経て、2015年頃にエンタープライズ・ブロックチェーンが本格的に普及し始めたのを目の当たりにしました。リップルがブロックチェーン開発の最前線にいることを知り、2016年に入社しました。現在は、企業戦略や事業オペレーション、ジョイントベンチャーとの提携などを担当しています。

キャサリン・チュウ:私はブルームバーグの記者として10年ほど働いていました。その経験から金融システムを刷新する必要があると感じていました。金融緩和によって、年金基金などの資産運用者は目減りしていくリターンに直面せざるをえませんでした。ブロックチェーン分野が盛り上がりを見せていた2017年、金融の最前線で、金融の未来のためにイノベーションをもたらす仕事をしたいと考え、一念発起して新たなキャリアを築くことを決め、この業界に足を踏み入れました。

シャーリー:私は大学卒業後、KPMGで監査役としてキャリアをスタートさせました。2017年、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOがビットコインに触れ、一気に世間の注目が集まりましたが、私もその発言をきっかけに、暗号資産に興味を持ちました。当時、いくつかの職種で募集をかけていたOKExで新たな仕事の機会を得ました。入社当初は、各種暗号資産のリスティングを担当しており、XRPのリスティングも初期のプロジェクトの1つでした。資金が必要な場合には内部の財務部門に指示を出すといった役割も担っています。

キャサリン・ウン:私は2016年にシンガポールでマサチューセッツ工科大学(MIT)フィンテックコースのブロックチェーン基礎に関する講座を受けていたのですが、その中でテクノロジーによってお金やその他の資産の取引方法がどのように変化するかに興味を持ちました。2017年に、友人からLiquidを紹介され、マーケティング部門のグローバルヘッドとして働きはじめました。Liquidは日本で金融庁の登録を受けた暗号資産 / 仮想通貨交換業者の中でもグローバルに事業を展開した初めての事業者でした。私は、ICOブーム全盛期だった2017年のわずか1年の間に、マーケティング部門を立ち上げ、チームを16人にまで拡大させる責務を担いました。

Liquidを退社して、現在はシンガポールに本社を置くTZ APACのAPACマーケティング部長を務めており、アジアにおけるテゾス(Tezos)の普及・推進に携わっています。
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文=吉川絵美

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