宇宙

2025.05.26 10:30

巨大太陽嵐の新たな最悪シナリオ、科学者が警鐘 衛星観測史上最大の500倍規模も

太陽のコロナ質量放出(CME)の様子を描いた想像図。左下は大きさ比較のための地球(Earth)(NASA/Goddard Space Flight Center/SDO)

太陽のコロナ質量放出(CME)の様子を描いた想像図。左下は大きさ比較のための地球(Earth)(NASA/Goddard Space Flight Center/SDO)

NASAによると、2024年5月10~11日に出現したオーロラの発光強度は2003年以降で最大であり、過去500年間で最も高かった可能性があると示唆する科学者もいる。だが、最終氷期に起きた大規模な太陽粒子嵐と比べると、その印象がほとんど霞んでしまう。史上最強の太陽現象と思われるこの太陽粒子嵐は、現代に観測された太陽嵐の約500倍強力だったのだ。

極端な急上昇

今から1万4000年以上前に起きたこの現象は、にわかには信じ難いものだ。学術誌Earth and Planetary Science Lettersに掲載された論文によると、仏アルプス地域での樹木年輪調査により、最終氷期末期に当たる紀元前1万2350年に、放射性炭素(14C)濃度の極端な急上昇が起きている証拠が明らかになった。

太陽粒子嵐が発生すると、太陽から高速で飛来する高エネルギー陽子(プロトン)が大量に地球に降り注ぐ。14Cなどの放射性同位体は、大気中で高エネルギー粒子によって生成される。

論文の筆頭執筆者で、フィンランド・オウル大学の博士課程修了研究者のクセーニヤ・ゴルベンコは「今回の現象は新たな最悪事態のシナリオを設定するものだ」として「現象の規模を理解することが、人工衛星、電力網、通信システムなどの近代インフラに対して将来の太陽嵐がもたらすリスクを評価するために不可欠となる」と説明している。

太陽現象のモデル化

研究チームは、古代の太陽粒子嵐を再現するために設計され、樹木年輪データで検証された化学気候モデルを用いて、紀元前1万2350年の現象(12350BCイベント)が、これまでの年輪記録で最も強い太陽嵐に比べて約18%強力だったと推定している。比較したのは西暦775年に発生した現象で、現代になってからは同等規模の現象は起きていない。

ゴルベンコは「今回の研究の推定によれば、現代の衛星観測時代で最大規模の現象である2005年の粒子嵐と比較すると、古代の12350BCイベントはその500倍以上の規模だった」として「古代の12350BCイベントは、過去1万2000年間にわたる安定した温暖気候の完新世の前に起きたことが知られている唯一の極端な太陽粒子現象だ」と続けている。この他にも、大規模な太陽粒子嵐が西暦994年頃、紀元前663年頃、紀元前5259年頃、紀元前7176年頃にそれぞれ発生している。

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翻訳=河原稔

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