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2025.05.21 08:00

「致します」と「いたします」の違いとは?意味と正しい使い分け、ビジネスシーンでの使い方を例文付きで徹底解説

「致します」と「いたします」の意味とは?

そもそもの由来と基本的なニュアンス

「致します」「いたします」は、いずれも「する」の謙譲語としての役割を果たす表現です。謙譲語とは、自分の行為をへりくだって述べることで、相手への敬意を示す言葉遣いを指します。この2つは似た用途を持ち、どちらも丁寧な印象を与えることができますが、文字表記や文脈によって微妙な違いが生じます。

伝統的な文法解釈では、「致す」は一つの動詞(本動詞)として機能する際に用いられ、「いたす」は補助動詞として使われることが多いという説があります。例えば「ご連絡致します」という表記に違和感を覚える人もいれば、「連絡いたします」のほうが本来の文法的には正しい補助動詞表現だとする考え方です。

しかし、現代では「致します」と「いたします」はどちらも謙譲語として広く認められているため、ビジネスシーンや日常会話で使う場合、必ずしも誤りとまでは言えないのが実状です。とはいえ、動詞として使う場合と補助動詞として使う場合で文字表記を分けるほうが、より厳密かつ美しい日本語表現になるという見方もあるため、意識してみる価値はあるでしょう。


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ビジネス文書・会話での「致します」と「いたします」の使い分け

公的・正式文書や厳粛な場面には「致します」が好ましい

手紙や重要な契約書、公式な文書など、より改まった文章を作る際には、従来から「致す(致します)」という表記が一般的でした。例えば、「ご協力のほど、何卒よろしくお願い致します」と書くと、文語調のやや厳粛な印象を与えられます。

公的機関とのやりとりやかしこまった案内状など、よりフォーマル度が高いケースでは、「致す」のほうを選ぶと敬意を強調しやすいという考え方があります。ただし、現代のビジネスメールや会話では「いたします」でも大きな問題はなく、相手との関係性や状況に応じて柔軟に判断するとよいでしょう。

実務の場や普段のやりとりでは「いたします」が柔らかい印象

日々のメールや上司・同僚との会話など、そこまで厳粛ではない状況では「いたします」がよく使われます。例えば、「ご報告いたします」「準備ができ次第ご連絡いたします」という表現は、ややカジュアルかつ丁寧な印象を与え、実務にもなじみやすい表記です。

「~いたします」を選ぶと、文章や会話が堅苦しすぎず、ほどよい敬意を保ちつつスムーズにコミュニケーションできるメリットがあります。とはいえ、たとえば契約文書や重要な挨拶状などは「致します」のほうが適切と考える人もいるため、会社の慣習や相手の立場を配慮しましょう。

「致します」と「いたします」を使う上での注意点

本動詞としての「致す」と補助動詞としての「いたす」

前述の通り、日本語文法に厳密に則ると、「致す」という動詞と「いたす」という補助動詞は、本来別の役割を持つとされます。

  • 「致す」:本動詞。誠意をもって行う・振る舞う、あるいは「何かを成す」という意味を強調。
  • 「いたす」:補助動詞。「連絡いたします」「送付いたします」のように、本来の動詞「する」を丁寧に言い換える。

この使い分けを徹底するなら「連絡いたします」の表記が正しく、「連絡致します」はやや不自然という見解が成り立ちます。もっとも、現代では厳格に区別しない例も多いため、社内ルールや文書の性質に応じて柔軟に対応するとよいでしょう。

相手と場面に合わせたフォーマル度の調整

「いたします」と「致します」のどちらを使うかは、「誰に」「どんな目的で」文書やメールを書いているかを考慮することが大事です。

  • 公的書類・厳粛な場面:より敬意を示すため「致します」を選択
  • 普段の業務連絡や実務メール:「いたします」を使うと程よい敬語感
  • 厳密に文法を守る場合:「致す」は本動詞、「いたす」は補助動詞

とはいえ、多くのビジネスマンは実際のメールや会話で「いたします」と書くことが多く、誤りとされるわけでもありません。従来の文法や慣習を厳守したいか、柔軟に運用するかは、それぞれの企業文化や個人のスタイルにもよるでしょう。

「致します」と「いたします」を使った例文

ビジネスレターや契約文書での使用例

  • 「以下のスケジュールで進捗を報告致しますので、何卒よろしくお願い申し上げます。」
  • 「本契約に基づき、当社が責任を持って業務を遂行致します。」
  • 「ご協力のほど、重ねてお願い致します。」

公的書類や契約関連の文書では、こうした「致します」の表記が多く見られます。厳粛な雰囲気を保ちつつ、相手へ敬意を表す表現として機能するでしょう。

メールや口頭での使用例

  • 「明日までに資料を送付いたしますので、ご確認をお願いいたします。」
  • 「この件については、後ほどお電話いたしますので、少々お待ちください。」
  • 「プロジェクトの進捗状況は、来週ご報告いたしますね。」

普段の業務連絡や会話では「いたします」が柔らかくて使いやすいです。相手との関係性によっては「致します」に切り替えることもできますが、気軽な印象を保ちたい場面では「いたします」のほうがしっくりきます。

類義語・言い換え表現

「申し上げます」「承ります」「行います」など

  • 申し上げます:相手への敬意を強く示す言葉。報告・連絡など「申し上げる」行為にフォーカス。
  • 承ります:相手の意図や指示を受ける際に使う表現。注文や要望を「承る」イメージ。
  • 行います:具体的な行動を始める・実施するときに用いられる丁寧語。

それぞれ「致します/いたします」と近い意味を持ちますが、使う場面や対象が微妙に異なるため、文章全体のトーンや文脈を考慮して選ぶことが大切です。

「実施いたします」「対応いたします」「連絡いたします」など

  • 実施いたします:「実行に移す」意味を強調。プロジェクトの開始や施策の実行に。
  • 対応いたします:トラブルやクレーム対応、問い合わせへの応答などで使われる。
  • 連絡いたします:一般的な「報告・連絡」を丁寧に表現。最も広く使える補助動詞的な表現。

どの表現も「いたす」の形をとるため、フランクすぎず程よく敬意を示せるメリットがあります。書き手・話し手の意図を踏まえつつ、最適な動詞を組み合わせると文章が豊かになります。


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まとめ

「致します」と「いたします」は、ともに「する」の謙譲語としてビジネスシーンや日常で幅広く使われる表現です。文法的には「致す」は本動詞、「いたす」は補助動詞という区別があり、本来は「連絡いたします」のように補助動詞形を使うほうが正統的とも言われます。ただ、現代では両者の差異は必ずしも厳密でなく、文書のフォーマル度合いや相手との関係性に応じて使い分けるのが一般的です。

公的文書や契約関連など、厳粛な雰囲気を保ちたい場合には「致します」を選び、普段の実務連絡や上司・同僚との会話など、比較的柔らかくしたい場合には「いたします」が向いています。文章全体のトーンや会社の慣習も考慮して決めるとよいでしょう。

また、他の謙譲表現(「申し上げます」「承ります」など)や丁寧語(「行います」「対応します」など)との使い分けで、さらにバリエーション豊かな文章を作成できます。本記事を参考に、「致します/いたします」を正しく理解し、状況に応じたコミュニケーションスキルを高めてみてください。

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