日本のディープテックスタートアップが世界で勝つための3つのポイント
優れた技術はもちろん、創業者の高い「志」や困難を迎えた時に、人生観に繋がると表現できる強いミッションがあるかどうかが大切である。特に世界の課題を解決するディープテックは、技術・市場・資金の所在が同じではないケースも多く、広い視野で事業を構築・推進していく必要がある。 技術をコアにしながらも、グローバルマクロの流れを意識し、最終到達点から道筋を検証し、ビジョン実現のための戦略・開発・チーム・資金調達を構築・実行していくのは簡単なことではない。技術偏重になるのではなく、素晴らしい人に出会うチャンスを物にする力や新しいアイディアに耳を傾ける柔軟性が求められる。その上で、以下の3点を意識すると良いだろう。
・グローバルマクロ視点を持つ
ディープテック企業の製品は自国に閉じない製品が多く、多くは主要産業の要になる様な技術である。そのため、グローバルマクロ視点での課題・トレンドを意識すると、おのずとインパクトを出せるセクターは予見できる。世界中で今どんな産業やプレーヤーがいるかを知れば知るほど成功確率を上げる事が可能だろう。・End in Mind(落とし所を見据える。大局観を持つ)
基礎研究をする上では自由度が大切だが、ビジネスをする上では最終的に何をどのスケールで解決するのか、その道筋は正しいのかといった「大局観」を意識する必要がある。途中で予期せぬ事態は発生するが、そのたびに修正する柔軟性とレジリエンスが必要なのと同様に、「大局観」を持ち続けることも大切だ。日本の研究室で良しとされている技術の積み上げだけで成功することは、グローバルビジネスでは大変まれである。日本の大学発スタートアップもグローバルに「大局観」を持つ事が必要なフェーズに来ている。・実現技術トレンド
最近では1つの技術だけで成功する事例はまれであり、ビジョンをアンロックする技術トレンドを意識する必要がある。例えば複雑なシミュレーションはスパコンで演算結果を導く事が可能になったし、研究用に一品だけ必要な複雑な形状の機器等も3Dプリンタで製造する事で型費も無く、納品リードタイムがないまま開発を続けることが可能になった。米国では一般化した開発環境も、日本ではまだまだ浸透しておらず、様々なバックグラウンドを持つ人材の流動性を上げ、また取り込むことが必要である。海外ディープテック企業と日本企業のオープンイノベーション
米国のディープテック企業はEnd in mindを意識し、自分たちの事業が最後にどのようなインパクトを出すのかというビジョンを持ったうえで技術ポートフォリオとロードマップ設計を行っている。彼らにとって大企業との連携はあくまでその道筋の過程なのだ。とりわけ文化・市場性・地理的ギャップのある海外企業と組むことによるデメリットも多数想定出来る中で、自社が取り組むべき理由は何かをはっきりさせておく必要がある。
その上でもマクロ的に成長性が見られず対ドルで円安が進む国内での売上比率を維持させるだけでなく、海外事業比率を高めていく、そのために今までとは違う階層での事業や利益率の高い事業を作りたいという攻めた意識を持つ日本企業には新たな可能性があるだろう。なぜなら国内の市場や社内環境からは生まれない技術や事業がメタ感性を高めた海外スタートアップにはあるからだ。
今や日本市場だけを見る時代ではない。日本も率先して世界の課題を解決しなければならない。その核となるディープテックへの期待を胸に、一丸となってディープテック・スタートアップを支援したい。日本から世界にインパクトを与えられる企業が生まれることを願って。