そこで今回は、国内外の有望なディープテック企業に特化して投資するベンチャーキャピタル「Abies Ventures」のマネージングパートナーの山口冬樹氏とパートナーの長野草太氏に、ディープテックが世界的に注目される理由と日本が世界で戦うために必要な要素などについて伺った。
山口氏は、東京大学で物理学を修め、大手外資コンサル企業で働いた後に、日本を代表する連続起業家である孫泰蔵氏とMistletoeを創業。Chief Investment Officerとして、国内外のスタートアップだけではなくベンチャーキャピタルにも投資を行った。
長野氏は、海外在住が長く、米国や欧州の金融業界でキャリアを積んだ後、日本版テスラとも呼ばれた京都大学発の電気自動車スタートアップGLMのCFOに就任。中東やアジアの大富豪からの資金調達をリードし、香港で1500億円のエグジットを達成した。彼らは、「温暖化ガス排出量削減や労働力不足対策など、ディープイシューを解決するカギはディープテックにあり、技術先進国で21世紀のノーベル賞自然科学分野の受賞者数第2位の日本には限りない可能性がある」と語る。
投資金額にも現れるディープテックへの期待
コロナワクチンで有名なModerna、電気自動車で低炭素モビリティ革命を起こしたTESLA、これらはすべて、科学と先端技術を核としたディープテックスタートアップだ。現在、研究室発の世界規模での課題解決が可能なユニコーン企業の育成が求められている。国際機関や巨大な機関投資家の間でもサステナビリティをかなえる事業に注目が集まっている。
ESGに資する投資以外の引き上げが進んでおり、そうした対応ができない企業は生命線ともいえる資金を絶たれる流れとなっている。逆に言えば、ディープテック企業への投資は強まる傾向だ。実際、グローバルでは6兆円を超えるディープテック投資が行われ、2016-2020年の間に4倍以上に投資金額が膨らんでいる。
また、国内においては未上場企業時価総額ランキングトップ20社の半数以上が、何らかのディープテックを核とした企業で占められており、GDP対比ではまだ他国と比較し投資額が足りていないものの、産業としてのトラクションがついてきている事の証明とも考えられる。
世界基準の「プロセス品質」を示さなければ日本は生き残れない
ESG・DX・ディープテックなどは独立したキーワードのように取り上げられることが多いが、本来は関連することが多い。これらを大局的に捉えて事業戦略を立てる事が日本のスタートアップや事業会社に求められている。しかし、多くの現場では効率化や人手不足という観点から、既存のシステムにDXを導入しようとしている。確かに、大きな市場性を持つことも事実だが、これでは世界と戦えない。
日本産業の要とされている自動車産業を例に挙げよう。