すべての才能ある選手にチャンスを。名だたる五輪選手を育てたIMGのマネジメントとは


例えば東京オリンピックのサーフィン男子で、銀メダルを獲得した五十嵐カノア選手。彼との契約は、父親からの一本のメールがきっかけでした。

そのころの私はサーフィン競技についてほとんど知識がなかったのですが、調べてみると当時13歳くらいだった五十嵐選手は、すでに米国のローカル大会で30勝近くを収めていました。その時点では、ビジネスになるかどうかはわからなかったのですが、将来性に賭けてマネジメント契約を結ぶことにしたんです。

その後、本人の努力もあって飛び級で学校を卒業し、競技に専念する環境をつくりました。そして、今や世界で有数のサーファーに成長しました。振り返るとあのメールに対応して本当に良かったと感じます。

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五十嵐カノア選手/Getty Images

また、当社ではまだパラアスリートの実績がなかったころ、車いすテニスの国枝慎吾選手に「バカラ・アスリーツ・オブ・ザ・イヤー2007」の表彰式で出会いました。

「プロとして勝負したい。パラアスリートは契約できませんか?」という彼の言葉を聞き、「何とかならないか」と社内でも相談し、結果的に契約に至りました。当時一番困っているのは「活動費」ということだったので、現在のスポンサーとの橋渡しをしたんです。

このように我々の仕事は、才能あるアスリートの人生を大きく変える可能性があります。だからこそ、「時間や条件が許す限りアスリートの話を聞くこと」を大切にしています。

ただ、面会したり話を聞いた人すべての要望を受け入れられるわけではないので、その点は業界の課題でもあります。当社は、例えばパラスポーツの「車いすテニス」はテニスの知見を生かすことができましたが、陸上などどうしても現状ではシナジーが活かせない競技もあります。少しずつノウハウを積み立てて、拡大していきたいです。

スポーツ界で成功する条件とは


これまでに様々なトップアスリートを見てきた中で、世界で活躍する選手にはいくつか共通点があると感じています。

そのひとつが、明確に未来の自分が「成功するイメージ」を持っていること。例えばプロゴルファーの石川遼選手は、15歳のころに「マスターズで優勝する」と話し、そのことを確信しているかのようでした。優勝するために「今何をすべきか」について、かなり具体的なビジョンがあったのです。フィギュアの浅田真央選手もそうでしたね。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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