運営者が積極的に介入しなくても成長する仕掛けを用意するのは、特にリソースに乏しい立ち上げ期において重要です。成功するプラットフォームの必須条件といえます。
ただし、急成長を遂げるプラットフォームには後発のライバルがつきものです。過去を振り返ってみると、初期の立ち上げ期までは順調に利用者が伸び、収益を上げる構造をつくれたにもかかわらず、グロース期に入った途端、後発のライバルに出し抜かれ、市場から撤退せざるを得なかったプラットフォームには枚挙に暇がありません。
つまりフェーズが上がれば、戦術のバージョンアップが必要なのです。
──第2フェーズ・グロース期の2点
3)他のプラットフォームや個人間取引では実現し得ない価値を提供できるか?
一度つかんだユーザーを離さず、新規ユーザーを獲得し続けるには、立ち上げ期とは逆にサービス運営者の積極的な介入が必要になります。具体的には、ユーザーの手間を省くような機能強化を図ることよって、他社への乗り換えを阻むのです。
また、プラットフォームの基本的な役割は仲介機能にあります。そのためマッチング後、一度築いた関係性を個人間取引に還元することも不可能ではありません。いわゆる“中抜き”です。
新規ユーザーの獲得競争に打ち勝ち既存ユーザーの流出を防ぐには、マッチングの精度を高めるレーティング機能やレコメンド機能の強化、利便性の向上、高度なセキュリティ対策などを実装し、いつでも気軽に参加できて手厚いサービスが受けられる体制を整えるべきです。初速で稼いだ時間的、資金的なバッファはグロース期に向けた施策の充実に費やすべきといえます。
4)5割以上のシェアを取るまでやりきる覚悟はあるか?
類似するプラットフォームが群雄割拠する状況が長引くと、やがて起こるのが過当競争です。価格競争に陥ると、収益の悪化もさることながら成長力の鈍化も加速します。こうした局面に陥るのを避けるためにも、成長のスピードを維持することはとても重要です。当面の目標は、先に挙げた3つのポイントをベストなタイミングで実践し、市場占有率5割を目指すこと。放っておけばプラットフォームのコモディティ化は進みます。価格決定権を保つためにも、市場の5割以上の規模をいち早く獲る努力、そしてやりきる覚悟が必要です。
このチェックリストは、プラットフォームビジネスの立ち上げを検討する際はもちろん、話題のプラットフォームビジネスの分析にも使えます。
ふだん何気なく使い、テックジャイアントが定義、実践している「プラットフォーム」を理解することで、思考が深まり新規事業の道筋を照らす手助けになります。日本発のグローバルを席巻するプラットフォームが出現することを期待しています。
【連載】今までにないアプローチでデジタルを理解する
#1:戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ#2:何かご一緒できたら──は無用。日本企業はスタートアップを正しく評価せよ
#3:ビジネスプラットフォームに活路? ならば肝に銘じる4つのポイント
中村健太郎◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。