せっかくなので、開き直ってプラットフォームの定義や、その重要性をしつこく聞くと、彼がプラットフォームにこだわり、その定義を精緻に合わせたがる理由がよくわかりました。
彼らが明確にもっているプラットフォームの定義を一言で表すと「指数関数的な成長を実現するためのビジネスエンジン」となります。
あらためて市場環境を確認すると、この20年間でグローバルのトッププレーヤーの顔ぶれは様変わりし、デジタルテクノロジーを活用している企業がプレゼンスを拡大していることが明らかです。
●グローバル時代の時価総額の変遷
出典:公知情報からアクセンチュア作成
●ユニコーン企業になるまでの時間
出典:公知情報からアクセンチュア作成
また、この動向からは時価総額上位のプレーヤーの規模が大きく拡大していることも確認できます。
さらに、スタートアップの成長のスピードが加速しており、スタートアップの雄Facebookですら、近年では成長が遅い部類に入ります。一方で、企業の衰退の速度も同様に上がっており、より速くより大規模に成長しないと生き残れなく競争も激化しています。そのような環境下、線形的ではなく、指数関数的な成長をコミットし達成することが義務付けられるスタートアップにとっては、プラットフォームはその成長を実現するための要件が実装されている必要があります。彼らとの議論、その後筆者の調査から抽出された指数関数的な成長を実現するための要件とは、自社の関与を最小化することで成長のボトルネックを解消し、参加者の行動をプラットフォームの価値に変換する仕組みでした。
具体的には───、
・需要、供給双方を参加者が構成するN対Nの仕組み
・参加者間の価値を交換することをコアとする
・参加者の増加がプラットフォームの価値を増加させる
・ある参加者の取引が別の参加者の価値を増加させる
の4つであり、いわゆるネットワーク効果と呼ばれる概念と同じです。
筆者が口にした“プラットフォーム”を思い出すと、既存ユーザーAさんの年間決済金額が増えても既存ユーザーBさんの決済額の増加に寄与しませんし、ましてや利用経験のないCさんの獲得にもつながりません。
もちろん、予算や工数をかければ、ユーザーの決済金額の増加や新規ユーザー獲得はできるでしょうが、予算や工数、従業員は指数関数的に増やせないというボトルネックがある以上、ネットワーク効果が働く余地は少なく、指数関数的なビジネスの成長には貢献できないわけです。