ファントークンやNFTは、コミュニティを創造し、価値を生み出していく。それぞれの技術特性を活かしながら、持続可能な形で市場が発展していくには、どのコミュニティをターゲットにし、どのような価値を提供し、どうメッセージを発信してエンゲージしていくかが重要だ。
彼らはどのような近未来を思い描いているのだろうか。
「NFTやファントークンによって、コミュニティがWeb上で可視化されるとますます大きな価値として認識されますよね。アメリカのNFTでもまずは金融商品的なところよりも、この新しいファンエンゲージメントを確実に捉えることを重視する流れがメインです。
NFT、ファントークンが“有価証券として認識されるかどうか”、それはなぜなのか、当面注視していく必要があります」(鈴木友也氏)
「トークンが、“地域通貨的”な役割も果たせるのではないかと思っています。例えばクラブとともに何かソーシャルグッドな活動をしてくれた方に、クラブから、あるいは地域からトークンをリワードとしてお渡しするといったように、持ってもらう人を増やすことで、ベルマーレ、サッカー以外でも、地域に新しいコミュニティをもたらすことができるのではないかというイメージを持っています」(湘南ベルマーレ・加藤氏)
また加藤氏は、国境を越えたエンゲージメントの醸成にも期待する。きっかけは、イタリアでベルマーレのユニフォームが大人気になったことだという。
「漫画『ONE PIECE』との関連のようなのですが(笑)、インスタで発信すると必ずイタリア語でコメントがくるといった関係値が作れたんです。ただ、その先の手段がなかった。今後トークンを“ボーダレスなツール”として使えれば、また新たなファンエンゲージメントが築けるのではないかと思っています」
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グローバルという視点に関して、村田氏が次のように加えた。
「最初にファントークンを発行した時には実は批判もあったんですよね。チームが負けてたというのもあるんですけど(笑)、グローバルばかりに目が行っていて、地元のファン、既存のサポーターに対して何もしないのかと。“グローバルとローカル”、どちらかという話ではなくて、両方とエンゲージしていく設計にしなければ、発展していかないですよね。これを解決するために、投票内容をサポーターズクラブと相談して決定するというプロセスを踏みました。意思決定にコアサポーターを含めることで、地元のファンにも自分ごと化してもらう狙いがありました。
あとはやはり、“バーチャル”で完結していて投機的でもあるということで、なかなか手を出しづらい面があると思います。チケットやグッズといったものを付与するなどして現実空間と物理的にリンクさせるといった、“リアル”なユーティリティを高めることが重要ではないかと思っています」