投機か、コミュニティか? サッカークラブとNFTとファントークンの未来


KPIをどう見るか


「ファントークンだけに最初はもっとファンの方に買っていただけると思っていたのですが、想像以上に投資家が多かったです。感覚値的には7:3ぐらいの割合だったと思います」と言うのは、サッカー・ベルギー1部リーグのシント=トロイデンVV(STVV)の村田晋之佑氏。投機的ではなく、どうやって投資的なものに変換していくかという軸で考え、(利用している)ファン投票&報酬プラットフォーム「Socios.com」上での施策を繰り返しているという。

「小さいクラブなのでブランド力にあぐらをかくのではなく、施策をきっちり回して、投資で入ってくれた人にもファンになってもらう。ファンになっていただいた後はトークンを持っていることのメリットを増やして、ファンであろうと投資家でもあろうと良い気持ちになってもらう施策を重視しています」


(c) Socios.com

スポーツクラブだけでなく、どのビジネスでも求められるのはKPIだ。ファントークン事業はどのような物差しでクラブ内では評価されているのだろうか。村田氏が続ける。

「最初はKPIが見えなかったですが、いまは“3カ月以上持っている人の割合”を上げることを目標としています。昨年12月に発行した当初はそれが40%程度で、理論上2カ月半で全員が入れ替ってしまう状態でした。

8月時点では70%ぐらいでして、やはり20〜30%程度が流動している状態が健全ではないかと考えています。ある程度の流通量がないと、購入をきっかけにファンになってくれる人を増やすこともできなければ、価格も高騰してしまいますから」

解決策の一つとして取り組んだのが、シーズンチケットに特典を付けることだった。シーズンチケット購入者にはSocios上でクーポンコードを使ってトークンが手に入る仕組みを作り、少額でもトークンを持ってもらえるようにした。ファンに楽しみながら保有してもらうことで、急激な価格変動も抑え、投資的にも真っ当なものにすることを心がけてのことだ。

JリーグJ1湘南ベルマーレの加藤謙次郎氏もこう話す。

「今年1月にフィナンシェさんとトークンを始めて、2次流通がスタートして半年ぐらい経って、最初の1トークン2円くらいから、1カ月ほどで3円に上がって喜んでいたところに、ゴールデンウィークで“渋谷の大波(SHIBUYA CITY FCがFiNANCiEで発行したトークンが高値をつけ、FiNANCiEの二次流通マーケット全体で取引が活発化した)”が来まして、ベルマーレも300円ぐらいまで一気に上がったんですね。

そこから8月にかけて27円まで下がってきたので、投機的な方がいるほうが当然活性化には繋がるのですが、やはりベースとなる保有目的の方への施策をきちんとやらなければなりません。約1万人いるファンクラブ会員のうち、どのくらいの方に持っていただけるかということを一つのKPIとしてイメージしてるところです」


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文=新川諒 編集=宇藤智子

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