ビッグイベント目白押しの「中東スポーツ産業」 政府の積極投資で成長加速

Photo by David Cannon/Getty Images

中東で初めての万博となる「2020年ドバイ国際博覧会」が1年の延期を経て、10月1日に開幕した。

今後スポーツの国際大会も数多く予定されており、中東諸国政府は積極的な投資を続けている。その動向について、サウジアラビアを拠点とするPwC Middle Eastでスポーツ&エンターテインメント領域を担当するFaisal Hassounahに聞いた。


サウジアラビアでは市場規模が3年間で174%上昇


──まずは中東スポーツ産業の現況について、市場が急速に発展している背景やその原動力となる人気のスポーツがあれば聞かせてください。


中東諸国のスポーツ産業は近年著しい成長を遂げている。その中でもカタールやUAE、サウジアラビアは、スポーツを2030年までの成長戦略の大きな柱として組み込んでおり、政府が主体となってスポーツ産業の革新に取り組んでいる。特にサウジアラビアでは、市場規模がこの3年で174%上昇したとされている。

中東ではサッカーが不動の人気を誇るが、近年eスポーツの人気が高まっている。特に若い世代からの人気が高く、eスポーツを視聴するための様々なプラットフォームが普及していることや、中東特有の気候の影響を受けずに自宅でプレーできることが理由として挙げられる。現にeスポーツ市場は、サウジアラビアでは約7億ドル(770億円)、UAEでは約3億ドル(330億円)ほどとされており、さらなる成長が見込まれている。また最近では、バスケットボールやサイクリングなども人気を博している。

国際大会が多く開催されていることも注目すべき点である。アブダビグランプリ(F1)やドバイ・デザート・クラシック(ゴルフ)等のメジャー大会が毎年開催され、今後も2022年FIFAワールドカップや2023年世界水泳選手権、2030年アジア競技大会を始めとする数多くの国際大会の開催が予定されている。こうした大会招致をきっかけに新たな競技が人気を集めることも期待できる。


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──近年世界各国で「女性スポーツ」の推進が話題となっていますが、中東の状況はいかがでしょうか。

中東でも女性スポーツに関する議論は盛んに行われており、推進する動きが活発化している。新たな収益源として捉えられている側面もあるが、政府やスポーツ組織が、女性のスポーツ参加による社会的好影響を重視するようになったことが最大の要因と言えるだろう。

女性がスポーツ参加するための基盤を整備するため、例えばサウジアラビアでは、スポーツ省と教育省が協力し、全私立・公立の学校で女子生徒向けの体育の授業が必須教科に組み込まれるようになった。

また、各競技団体が女性向けの大会を積極的に開催していることも注目すべき点だ。昨年度は15年ぶりにサッカーアラブ女子選手権が開催され、アラブ女性スポーツ大会では9つの競技に過去最多の18の中東諸国が参加した。

中東では他国と比べて女性スポーツの普及に後れを取っていたが、引き続き推進されていくことだろう。


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文=菅原政規、安西浩隆、寺尾慎吾 編集=宇藤智子

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