──来年11月には「FIFAワールドカップ」がカタールで開催されますが、準備状況はいかがでしょうか。
大会に向けた準備の中でCOVID-19の影響はそこまで大きくないと言えるだろう。東京オリンピック・パラリンピックが開催されたことで、コロナ禍における大規模国際大会開催のための準備・運営のノウハウを得られたことは大きなメリットとなっている。
大会期間中のCOVID-19対策については、観客のワクチン接種義務化がカタール政府より6月に発表されており、今後さらに厳密なルールが導入されることも予想される。現時点では観客制限を行う予定はないとされているが、今後の感染状況に応じて判断が下されるだろう。
──国民の反応はいかがでしょうか。
開催に前向きな国民が多く、反対する声は少ないように見受けられる。これほどのビッグイベントを開催することは中東史上初であり、2022年以降も数多くの国際大会が予定されている。FIFAワールドカップを機にスポーツへの関心が一段と高まることを願っている。
Photo by Simon Holmes - FIFA/FIFA via Getty Images
中東諸国ではコロナ禍の影響が比較的大きくなかったとはいえ、国際大会を核として、女性スポーツの推進やスポーツテクノロジーの発展に向けた取組み等、産業全体で幅広い施策が展開されているのは特筆すべきポイントだろう。
各国政府はスポーツを「国民のQOL向上と外交及び外貨獲得の重要な手段」として位置付け、積極的な投資を続けている。急速に成長する中東のスポーツ産業に今後も注目したい。
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Faisal Hassounah◎PwC Middle East シニアマネージャー。公共事業部所属。スポーツ&エンターテインメント領域を主に担当し、クライアントに対し戦略立案や業務計画に関する支援を実施。デ・モントフォート大学大学院スポーツマネジメント学修士課程修了。
菅原政規◎PwCコンサルティング合同会社ディレクター。2005年より現職。中央省庁等の公共機関に対するコンサルティングに携わり、調査、業務改善、情報システムに至る案件を多く手がける。近年は、スポーツ政策及びスポーツ関連企業・団体向けのコンサルティングを実施。PwCが毎年発行する「PwCスポーツ産業調査」の日本版監修責任者。早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘研究員。
安西浩隆◎PwCコンサルティング合同会社シニアアソシエイト。2017年より現職。University of California, Berkeley卒。在学中はUC Berkeleyアスレティックデパートメントにてセールスやマーケティングの施策立案・実行に携わった他、スポーツ庁にて日本版NCAA(現UNIVAS)に関するインターンシップに従事。PwC入社以降は複数のスポーツ案件に従事するとともに、海外PwCスポーツビジネスアドバイザリーとの連携に務める。
寺尾慎吾◎PwCコンサルティング合同会社アソシエイト。2019年より現職。ニューヨーク大学大学院にてスポーツ経営学修士号取得。在学中はスポーツ団体に対する施策立案を実施し、マイナーリーグ球団でのインターンシップにも従事。PwC入社以降はスポーツ団体や官公庁の案件に従事。