そのフランスのスポーツ産業の状況やCOVID-19がもたらす影響、そして、2024年パリオリンピックが目指す方向性について、PwC Franceでスポーツビジネスを統括するEloi Poméに聞いた。
──COVID-19感染拡大の影響により、フランスでもロックダウンが行われました。フランスのスポーツ産業が受けた影響について聞かせてください。
昨年以降3度のロックダウン措置が取られ、全産業が深刻な影響を受けている。スポーツ産業に関して言えば、国内リーグが中断を余儀なくされたことに加え、国民の日常的な運動にも移動制限措置がかけられたことから、ランニング・自転車などの参加型スポーツにも影響を及ぼした。
中でもフランスで最も人気のスポーツであるサッカーは、シーズンが中断したことで大きなダメージを受けた。リーグ・アンおよびトップクラブは、主な収入源であるメディア収入が大幅にダウンした。リーグが締結していた1ビリオンユーロ(約1310億円)の大型放映権契約が、シーズン中断により120ミリオンユーロ(約157億円)にまで見直された影響が大きい。
中規模のクラブも、主な収入源のチケット収入とスポンサー収入がほとんどゼロにまで落ち込んだ。スポンサー企業もコロナ禍で財政的影響を受けていることから、リーグ・クラブがこれまでと同水準のスポンサー料金を獲得することは困難であり、財政的な回復には時間がかかるものと推測される。
サッカー以外の競技では、冬季スポーツが大きな影響を受けた。冬季スポーツはその性質上、数か月の間に年間の売上の大半を稼ぐ必要があるが、ロックダウンによりシーズンを丸ごと失ったことになる。
──フランス政府はスポーツ産業に対し、どのような支援を提供したのでしょうか。
フランスは元々政府の役割が大きいことで知られているが、コロナ禍においても政府の支援は変わらず積極的であると言えるだろう。
2020年11月にはフランス政府からスポーツ組織に対し、400ミリオンユーロ(約525億円)の支援パッケージを提供することが決定しており、これまでに提供された支援パッケージ・助成金等を含めると多くのスポーツ組織・企業は政府からの支援を受けている状態である。それでも競技連盟やクラブがおかれる状況はかなり厳しい。
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──他国では徐々に観客動員の制限が緩和されています。例えばイギリスでは5月から規制緩和が始まっていますが、フランスはどのような状況でしょうか。
全仏オープンテニスでは観客を10〜20%の水準まで動員しており、ニューノーマルが始まる兆しはあるが、感染拡大前の水準に戻るまでにはまだ数か月かかると予測されている。8〜9月頃には室内競技の規制緩和が予定されているため、この時期が一つの目安になる。加えてワクチン接種の普及は重要な要素になるだろう。