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Photo by Brian Cassella/Chicago Tribune/Tribune News Service via Getty Images

オリンピックという舞台に単なる偶然の金メダルはあり得ない。勝利の裏側には、さまざまな人々の力が結集した、緻密な戦略と準備がある。

3大会ぶりに五輪競技に復活し、見事、13年越しの連覇を達成したソフトボール。その裏には、日本代表チームに大会準備期間から帯同して選手たちへの用具サポートに携わった人がいた。


「やはりみなさんアメリカを焦点に置かれていましたので、“打撃”がいちばんのテーマでした。それと、マウンド。野球場にソフトボールのマウンドを作ることがあまりないので、マウンドの硬さやその対応が投手陣にとっては大きな関心事でした」

こう語るのは、ミズノの塚原弘珠さんだ。

打倒アメリカを果たすには、モニカ・アボット、キャサリン・オスターマン、ふたりの左腕投手を打ち崩す必要がある。いくらエースの上野由岐子投手が相手打線を零封しても、得点を奪わなければ勝利はつかめない。また、ベテラン上野の負担を少しでも減らすためにも、打線の援護は今大会の必須条件だった。

打撃陣に対して、ミズノはどんなバットを提供したのか? まず、試合を見ていて印象的だった藤田倭選手について。ひとりだけ、やけに長いバットを持っているように見えたからだ。

「藤田選手は他の選手より長いバットを愛用されています。多くの選手は長さ84センチのバットですが、藤田選手は86センチ。長い方が飛距離が出るからでしょう。長距離打者ですからトップ・バランスのバットです」

ヘッドが重く、距離の出やすいトップ・バランス。しかも86センチという長いバットで3試合連続ホームランをかっ飛ばしたのだ。その3本はすべて使い慣れた同じバットで打ったものだという。

しかし、バットの反発係数には規定があり、試合前に必ず打球面の反発係数を審判団が測定し、基準以上のバットは撥ねられる。検査に合格しないのは新品バットでなく、使い込んだバットなのだという。そのため、試合に使用するのはある程度使い込んでいるが、消耗しすぎないもの。程よい具合のバットで藤田は快進撃の原動力になったのだ。


写真:AFP/アフロ

他の選手にも、今大会に向けて新たな対応を準備していた。

「相手投手に応じて違う長さのバットを使いたいという要望がありました。3スペックくらい提供した選手が多かったですね」

文=小林信也(作家・スポーツライター) 編集=宇藤智子

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