東京五輪ソフトボール 獲るべくして獲った「金」を支えたミズノの存在

Photo by Brian Cassella/Chicago Tribune/Tribune News Service via Getty Images

さらに暑さ対策を万全にするため、アンダーシャツやユニフォームにミズノ独自の機能素材「ドライエアロフロー」を採用した。キーワードは“空隙(くうげき)”だという。

「見た目は透けて見えるくらいの粗いメッシュで、通気性を保つために空隙、つまり空気のすきまとその周囲に疎水・撥水素材を配置することで、空気の通り道に水分を残さない構造にしています。通常の繊維だと汗で膜ができて通気性がなくなってしまうのですが、この空隙が汗を外に放出して、大量の汗をかいた場合でも膜ができにくく、従来品の約1000倍(商品によって異なる)の通気性を実現しました。

ミズノが提供した他の競技のユニフォームにも使われており、また高校野球のユニフォームや一般の生活シーンでも使われている肌着等にも応用され、人気を集めています」


(c) Mizuno Corporation

最後に、2004年のミズノ入社以来17年間ソフトボール競技を担当し、北京・東京と日本代表チーム・選手たちを支えてきた塚原さんに、チームから感じたことを訊ねた。

「オリンピックが始まってから、日替わりで活躍する選手が違っていた。そのおかげで日に日にチームがひとつになって行ったとすごく感じました。大会が1年延期になって、どの選手も一段レベルが上がったと思います。そして、若い選手たちはこのオリンピックですごく成長したという印象があります」


金メダル獲得後リモート取材に応じてくれた、ミズノ株式会社ソフトボール女子⽇本代表担当の塚原弘珠氏

活躍を見せた後藤投手も、試合で伸びるタイプということか。そして、そこを宇津木監督が見抜いて起用したということなのだろう。

「選手一人一人が積み重ねた努力と意識、監督たちの采配...... やはりそうした“準備”と“チーム力”が素晴らしかったです」

ソフトボールは、また五輪競技から外れてしまう。今大会躍動を見せた選手たち、そしてソフトボールの未来はどうなるのか。五輪競技であるかどうかが重視されすぎること自体に問題はあるが、そのことであらゆる評価や扱いが露骨に変わってしまう現実もある。

「ソフトボールは来年春に、新リーグが開幕します。2008年の北京五輪でも金メダルを獲得した直後には多くの観客を集めながらも、数年後には競技人口減という厳しい状況に直面しました。再び同じ道を歩まないように、この盛り上がりを新リーグに繋げていけるように関係者一丸となって取り組んでおられます。今大会は無観客開催でしたが、私たちもまずはとにかく生で見て楽しんでいただきたいという強い想いでいます」

文=小林信也(作家・スポーツライター) 編集=宇藤智子

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