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2021.09.26 11:30

「羊食」はブームから定番へ ニューウェーブ中華店の増加が背景に

延辺朝鮮族の店の人気メニューは羊肉串。スパイスに特徴がある


日本にあった4度の羊肉のブーム


ところで、菊池さんがこうした考えを持っているのは、彼が1997年から2001年まで北京に留学していたからである。
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菊池さんは岩手県釜石市の出身だが、日本では珍しく彼の地では羊食が一般的だったそうだ。高校卒業後、中国に渡った彼を強く惹きつけたのは、北京市北西部に位置する中央民族大学周辺の新疆ウイグル人が多く住むエリアだった。そこで彼は本場の羊肉の料理を知り、店に通い詰めたという。そして、北京の留学仲間と羊齧協会の母体となる「ウイグル料理を食べる会」を結成した。

帰国後、故郷には戻らず、東京で暮らし始めた菊池さんは「なぜ日本人は羊を食べないのだろうか」と強い疑問を抱いたそうだ。

こうした思いが原動力となって、菊池さんは羊食を普及する活動に邁進した。まず始めたのは、都内のさまざまな羊肉の料理を食べられるレストランでの、会員を募っての食事会だった。2014年からは羊肉好きのためのイベント「羊フェスタ」も開催。コロナ禍で昨年は見送りとなったが、その前年の2019年には約3万人が参加するほどの大きな催しとなっている。
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さまざまな羊料理の屋台が並ぶ「羊フェスタ」

菊池さんは日本の羊食の歴史にも関心を持っている。彼によれば、戦前から数えると、これまで日本に4回の羊食のブームがあったという。

まず戦前の「0次ブーム」は、昭和10年代の日本人の洋装化や軍服需要から、羊毛を供給するための政策が背景となり、それにともない羊の食肉利用があった。ジンギスカンという料理が日本で生まれたのもこの頃だという。

戦後の「1次ブーム」は、1960~70年代の北海道旅行ブームでジンギスカンが全国に広まったこと。「2次ブーム」は、2000年代中頃のBSE(牛海綿状脳症)問題で牛肉の輸入が減少し、代用としての羊肉の需要の高まりが背景にあったという。

そして、2015年頃から始まり、今日に至るのが、これまで述べてきたような「3次ブーム」である。菊池さんは「ブームという言い方をするのなら2018年がまさにそうだった」と話す。

グルメ誌の「dancyu」が特集「羊好き。」を企画したのは2018年6月号。また同年8月1日、NHKの情報番組「あさイチ」も「到来!羊肉ブーム」として特集。菊池さんも番組の出演者としてブームの内実を解説、「一過性のものではなく、日本の食文化に羊肉が浸透してほしい」と語っていた。

「羊齧協会を始めた2012年から比べると、番組が放送された2018年は隔世の感があった。それからさらに3年がたち、いま感じているのは、羊肉がマニア受けする食材から、一般の人たちもすすんで食べるものになってきたことだ。羊は珍しい食べ物ではもうないし、羊肉の好きな人もマイノリティではない」

そう語る菊池さんは、いま、コロナ禍で昨年は中止となったイベントを、「羊フェスタ2021」として、11月6日と7日に東京の中野セントラルパークで開催する準備を進めている。

連載:東京ディープチャイナ
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文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会、佐藤憲一(内蒙古自治区の羊)

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