アートを通してルールを考える 「ルール?展」ディレクターの狙い

「ルール?展」展覧会ディレクター(左から)田中みゆき、水野祐、菅俊一

「ルール?展」展覧会ディレクター(左から)田中みゆき、水野祐、菅俊一

7月2日から東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで「ルール?展」が開催している。

法律、文化的背景に基づいた規則やマナー、家族のルール、マイルールなど、日常のあらゆる場面で私たちの行動を形づくる「ルール」。新しいルールの見方・つくり方・使い方を考える展示を行うというが、ルールについて考えることで見えてくるものとは一体なにか。

展覧会ディレクターチームの3人、法律家の水野祐、コグニティブデザイナーの菅俊一、キュレーターの田中みゆきに、展示を通して伝えたい思いを聞いた。


──目まぐるしく社会が変化する現代において、ルール自体も転換期を迎えていると思います。いまルールはどのように変化していると考えますか。

水野祐(以下、水野):決められたルールをただ守れば効率よくこなせる時代から、既存のルールを疑い、修正し、自分たちで新しく規定する必要がある時代になってきていると思います。法律でいうと、だいたい戦後にできてから70〜80年経っていて、建て増しでは無理がきていることが顕在化しているのかなと。

菅俊一(以下、菅):自分の年齢や立場の変化も大きく関係すると思っています。子どもの時は常に大きな存在がいて、基本的にはルールに従わざるを得ない状況の方が多かった。でも年齢を重ねると自分が決める側になってくる。そういう時に、じゃあ何をどう決めるのか、と立ち向かうことが増え、ルールについて考える真剣味が増してきたような気がします。

菅俊一
コグニティブデザイナー 菅俊一

──必ずしも守れない理由があったり、ルール自体に疑問を感じ、息苦しさをおぼえる人もいると思います。社会の変化に呼応したり多様性を尊重するには、ルール自体に柔軟性が求められるのではないかとも思います。

田中みゆき(以下、田中):日本ってひとつの商品のバリエーションが多いですよね。例えばコンビニには、抹茶ラテにキャラメルラテに、とラテだけでたくさんの種類が用意されて、色んなニーズに対応しようとするじゃないですか。こちらから何も言わなくても選択肢が豊富で、わかりやすく、綺麗にお膳立てされている。

普通に生活する分には、戦って権利を勝ち取ったり、制度を疑問に思ったりしなくても便利にやってこられていたというか。多くの人にとっては「なぜこの仕組みはこうなっているんだろう?」などといちいち思わなくても生きられる国。でも、その代償がいますごくきていると思います。

ルール?展
会場風景(ギャラリー2)(撮影:吉村昌也)

菅:ルールがあるからこそ変な物が出てくる、みたいな例が日本は多い気がして、それはある意味での魅力になっているのかなと。さっきの話だと、いざラテが人気だとなると、そのラテというルールのなかで何かを作ろうと、いろいろ変なものが出来ていくわけですよね。クリエイティビティと言っていいかわからないけど、こういった日本ならではの誤用があるからこそ、面白い状況になることはあると思います。やっぱり人は制限があると挑戦して、どうにかそれを乗り越えて面白く、良くしていこうとする。

田中:ビジネスではそういう面白さがあるのに、なぜ政治だったり、本当に必要なところにそれが反映されないのか、とは思いますよね。

菅:そうですね。チャレンジや提案は、あらゆる社会実践の場面で本当は表れないといけないと思います。

水野:ルールって面白く楽しく捉えることもできますよね。ゲームのルールとか、人との関係を円滑にするための暗黙のルールとか、あるいはSDGsもルールによって社会を変革していこうとするポジティブな例だと思うんです。だけど法令とか、学校や会社の規則の話になると、みんな途端に窮屈でできる限り遠ざけておきたいものになってしまう。
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文=河村優 写真=苅部太郎

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