谷本有香(以下、谷本):スターバックス日本上陸25周年、おめでとうございます。この25年の変化を振り返っていかがでしょうか。
水口貴文氏(以下、水口):1996年に銀座に日本1号店をオープンし、この25年で店舗数は1637店舗(2021年3月末現在)にまで増えました。この間にお客様のニーズも供給側のバリエーションも非常に多様化しています。
しかし、店舗数が100店舗のときも、1600店舗を超えた今でも、私たちが大切にしていることは変わりません。ミッションである「人々の心を豊かで活力あるものにするために── ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」の通り、目の前のお客様ひとりひとりと温かい繋がりをつくることを続けてきたと感じています。
谷本:この25年の間にコーヒーショップはたくさん増えましたが、現在のスターバックスのポジショニングをどのように捉えていますか。
水口:有名コーヒーブランドの日本上陸やコンビニの参入のたびに、スターバックスにとっての脅威について聞かれるのですが、私はむしろコーヒー業界全体が盛り上がる好機と捉えています。というのも、おもしろいことに、コンビニコーヒーが始まって以降もスターバックスのコーヒーの売り上げは落ちていないんです。これはお客様の生活が多様化しているからではないでしょうか。
特にリモートワークが普及してから、自宅でも美味しいコーヒーが飲みたいとお求めになる方も増え、お客様との接点は増えています。そのなかで、クイックにコーヒーを飲みたいときはコンビニで、ゆっくりしたいときやいろんな種類のコーヒーが飲みたいときはスターバックスでというように、お客様が上手に使い分けてくださっているのだと思います。
(写真提供:スターバックス)
谷本:お客様のライフスタイルやニーズが多様化しているなかで、スターバックスの役割は?
水口:ミッションにもある通り、「地域」や「コミュニティ」はキーワードのひとつです。それぞれの店舗が積極的にその地域に溶け込んで、人々やコミュニティと繋がりをつくることを大切にしています。例えば、スターバックス コーヒー 町田金森店は、町田市と共に認知症の方やその家族たちが交流する「Dカフェ」を店舗で開催し、地域の課題にスターバックスとして何ができるかと考えました。
他にもスターバックスの発信力は大きな武器ですので、暮らしに寄り添う集いの場となるだけでなく、その土地の伝統工芸を広めたり観光地としての魅力を高めたりすることに貢献していきたいと考えています。