谷本:変わらないものもあれば、変わらなくてはいけないものもありますよね。どうやって時代性をよんでいますか。
水口:我々は、デジタルとの融合やサスティナビリティを意識した取り組みなど、相当早いうちから始めています。今でこそキャッシュレスが当たり前の時代になりましたが、スターバックスがプリペイドカードを始めたのは2002年です。公園内に店舗をつくったり、藤原ヒロシさんのようなデザイナーとコラボしたり、新しいことにチャレンジすることを忘れません。
そういうチャレンジは止めたらいけないと思っています。Who we are、Why we are hereという存在意義の部分は変えてはいけないけれど、HowやWhatの部分は時代に合わせて変えていくことが大切だと思います。
谷本:しかしスターバックスを見ていると、時代の変化とは違うところの動きをされていると感じることがあります。一周して、原点に戻ってきたように思うのですがいかがですか。
水口:最近だとDXが語られることが多いですが、DXをやれば全てが解決するわけではありません。デジタルにしてもDXにしても、やりたいことが明確にあるうえでどう使うかが大切です。私たちのミッションは人と人との繋がりをつくることで、デジタルはあくまでそれをサポートするもの。新しいものや流行は標準化していくからこそ、やはり存在意義の部分が重要だと思います。
例えば、コロナ以降一気にデリバリーが増えましたよね。スターバックスもデリバリー事業に参入していますが、実は始めるときに「デリバリーで人との繋がりをつくるのは難しいのでは?」という意見を多くいただきました。しかし、デジタルだろうが何だろうが、そこに心を込めることはできます。
実際に、デリバリーをスタートしてすぐ、新宿のあるパートナーがデリバリー商品に「今日はありがとうございます。またお店で会うことを楽しみにしています。こんな時ですからお食事を楽しんでください」というメッセージを添えて、お客様に喜んでいただきました。デリバリーでも繋がりができるんです。Howを変えながらも存在意義がブレないところは、こういう部分に表れると思います。
谷本:最後に今後のビジョンについて教えてください。
水口:スターバックスは居心地のいい場所として、家でも職場でもない「サードプレイス」を提唱してきました。これからは、より一層多様化するお客様のニーズや生活スタイルにフィットする自分の居場所としての「マイプレイス」としての価値を高め、同じ価値観をもつ人や同じことをやろうと思っている人が集まる「シェアドプレイス」としての役割も担っていきたいと考えます。
水口貴文◎54歳。1967年1月生まれ。2001年、LVJグループ ルイ・ヴィトン ジャパンカンパニー入社。2010年、同社ロエベ ジャパン カンパニー プレジデント&CEO。2014年9月、スターバックス コーヒー ジャパン入社、最高執行責任者(COO)。2016年6月、同社CEO(代表取締役最高経営責任者)就任。