スタバ日本上陸25周年 「変わったこと」と「変わらないこと」


谷本:店舗数がこれだけ多くなったにもかかわらず、スターバックスではどの店舗でもフレンドリーな接客を体験できます。社員ひとりひとりに企業文化やミッションが根付いているのはなぜですか。

水口:スターバックスにはバリューズという行動規範があり、お客様に誠実に向き合うことをひとりひとりが徹底しています。私は2014年にスターバックス コーヒー ジャパンに入社しましたが、実は最初、銀座の店舗で研修したことがあるんです。実際に店舗に立ったのですが、もちろんできることは限られていて。

とはいえ、一応社長候補として入っているので、普通だったら気を遣われてもおかしくないのですが、当時の店長は「ゴミ捨てといてください」とか「お皿回収してきてください」というように、どんどん私に指示を飛ばしてくれました。お客様の前では、みんな平等。だからこそスタッフをパートナーと呼んでいるわけですし、それが実践できていて「いいなぁ」と感じました。

スターバックスでは、パートナーは約4カ月ごとに目標をたて、それと合致した行動をとると互いに褒めたりカードを送り合ったりします。「さっきのあれ良かったよ」という声かけは、日常的に飛び交っていますね。私も店舗研修時にフードケースのドーナツを並べていたら、アルバイトの大学生に「上手ですね」と褒めてもらいました。「それなら、もう少しやっちゃおうかな」と気分がよくなったものです。

谷本:ひとりひとりがオーナーシップを発揮して働いているように感じます。

水口:会社が大切にしていることと自分がやりたいことに接点が見出されると、自らどんどんやってみようと思えますよね。例えば、鹿児島仙巌園店はひとりの店長の熱意でオープンした店舗です。この店舗は、世界文化遺産である仙巌園に隣接する旧芹ケ野島津家金山鉱業事業所をリノベーションしてできました。

目の前に桜島が見えるこの場所にかねてより出店したいと考えていた彼女は、仙巌園が世界文化遺産の候補に挙がった際、いてもたってもいられなくなり、自ら建物のオーナーにスターバックスの理念やここに出店することの意義を語りに行ったんです。

地元の人が桜島や仙巌園を見てもう一度地元に誇りをもてる、そういう場になりますと。その後みんなでフォローし、最終的には4年後にオープンに至りました。地域に根差すことを大切にしている我々のミッションと彼女のパッションが重なったいい例だと思います。

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(写真提供:スターバックス)

谷本:人が中心という文化がブレずにあることがよくわかりました。

水口:文化は決断や行動の積み重ねだと思っています。「人が大切だ」と口で言っていても、いざ何かが起きたときに会社の決断が普段の言動と違っていたら、すぐに文化は崩れます。例えば、昨年、1回目の緊急事態宣言が発出されたとき、私たちは雇用を維持しながら1200店舗を閉めるという決断を下しました。

あの頃はまだコロナがどういうものか分からない状況で、必ずしも店を閉める必要はなかったのですが、役員会で「今、娘さんを店に出しますか」と言われて、これが結論なんだろうなと。決断は毎回、真剣勝負です。

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文=伊藤みさき 取材=谷本有香 写真=小田駿一

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