現在、人工林の齢級別面積では、切り時の目安とされる10齢級(約50年)以上の人工林が全体の51%を占める。国内の人工林の7割を占めるスギ・ヒノキの多くは伐採期を迎えた。その森林蓄積は、2017年の52億㎥と50年間で倍増。まさに、「木は使われるのを待っている」のだ。
乃村工藝社は、一般社団法人全国木材組合連合会と連携して、これまであまり使われてこなかった非住宅の内装などに木材利用を促すプロジェクトを実施している。上記の課題に取り組む具体的なプロジェクトが「もりまちドア」だ。「もり」側の林業従事者と「まち」側の空間クリエイター(デザイナー・プランナー・施主)をつなぐことで、木材利用の創出を促進する。その向かう先は、森の循環利用である。
同プロジェクトが力を入れるのが産地体験会。「まち」側の空間クリエイターが実際の産地に入って体験することで、木材の価値と使い道について考える。体験会は、三重県尾鷲・埼玉県飯能・東京都多摩地域で開催されてきた。ここでは、東京都多摩地域で開催された「東京都多摩産材産地体験会」を紹介する。
森の循環のいま
乃村工藝社は「森の循環」と「都市での循環」の2つの循環の確立を目指している。「森の循環」では、木を植え、育て、伐って、ならすサイクルを回すという産地側での循環。「都市での循環」は、木材の新たな活用方法や長期間維持する方法を見出すことで、利用側での循環を図るものだ。この2つは別個のものであってはならない。そこで、同社が推し進める「もりまちドア」が、2つの循環をつなぎ、歯車のように相互を作用させる。
木が再び木材として使われるには50年ほどはかかるといわれているが、鉄やアルミ、石油などの枯渇性資源とは異なり、使った分を植えて育てることで再生可能資源となる。さらに光合成によって取り込まれたCO2は一定期間木に固定される。生産と消費のサイクルの違いを前提に経済的にもバランスを取って森を育みながら使っていくことができれば、サーキュラーエコノミーを実現するうえでも鍵になる原材料の一つになる。
その木材、特に国産材の価値が見直されている。長年安価な輸入材が使われた結果、国産材自給率は下落してきたが、2002年の18.8%(1692万㎥)を底として2018年の36.6%まで回復。1970年代では、国産材は輸入材と比べて1.5倍から2倍程度の単価が高かったが、いまは概して国産材のほうが安くなっている。価格低下に加えて、使い心地や環境への効果などが見直され、需要も回復傾向にある。
それでも、冒頭の加藤さんの言葉にもあったように、人工林の半数以上を占める50年生を超える木が「伐り時」を迎え、使われる先を探しているという。
林野庁 日本の森林 林業の今 より