経済・社会

2021.06.10 16:30

ウッドショック禍でチャンスを掴めるか 国産材への非住宅分野での期待

森の循環には、木材の使用が不可欠だ


製材所「木を知り、価値につなげる」
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原木市場から調達された原木は、製材所で板材などに加工され、消費地に向けて出荷される。次に訪れた沖倉製材所では、木材の皮を剥ぐ工程から原木を板材に加工するなどの過程を見学した。製材過程だけではなく、保管方法(天然乾燥や中低温乾燥)の違いや重要性も学んだ。

多摩産材としてブランディングされる前から多摩の木の普及に力を入れてきた沖倉製材所。新たな利用用途の開発にも工務店などと取り組んでいる。「さらに木を知っていただくことで、新たな価値につながります」と沖倉製材所代表の沖倉喜彦さんは話す。

沖倉製材所
沖倉製材所 代表 沖倉 喜彦さん
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木材
沖倉製材所が工務店と取り組む「東京十二木の家」のサンプル木箱。全ての建材を東京の木でまかなう。そのストーリーと価値に共感する方が増えているという

体験会の最後は、多摩産材が活用されているレストラン「do-mo kitchen CANVAS」での意見交換会で締めくくられた。中嶋材木店代表の中嶋博幸さんと社団法人多摩産材活用あきがわ木工連の佐藤真さんによる多摩産材活用事例が紹介され、参加者による意見交換が行われた。「東京の森という利点は多いに活かせるのではないか」と話すのは中嶋さん。佐藤さんからは、保育園での木育が意図された活用事例の紹介とともに、ストーリーを生かしたデザインの重要性が指摘された。

多摩産材活用の最近の代表的事例は、2020年11月に改良工事が完了した小田急電鉄の小田急小田原線の参宮橋駅だ。「木と緑に溶け込む『杜』の玄関口」がコンセプトの同駅の多摩産材の一部には「東京の木 多摩産材」という表示もあり、その存在感をアピールしている。

参宮橋

小田急線
(写真:小田急電鉄)

今回の体験会後のアンケートでは、「体験会を通じて、国産木材利用の意義を感じた」と答えたのは、空間クリエイター90.7%・施主70.6%・製作・施工業者66.7%。「デザインの際に木材を使う『理由』を探す」という回答なども得られたようだ。使う側の木に対する意識は高まったのではないだろうか。

サーキュラーエコノミーの観点から


「もり」と「まち」をつなぐことについて、サーキュラーエコノミーの観点から、次の4つの点を考えていきたい。

CO2削減とカスケード利用

やはり木材利用が寄与するCO2削減は、サーキュラーエコノミーの観点からは外せない点である。木材利用には、木が生育する過程で吸収するCO2を固定する「炭素貯蔵」、酸素の放出、水源の涵養、製造時のエネルギー消費を抑えられること、また木材が寿命を迎えた際に燃料として使用すると化石燃料の代替エネルギーになる点が利点として挙げられる。

さらに木材は、再利用やカスケード利用が容易な材料としても認識される。住宅や家具で使われたのち、合板やパーティクルボードやチップにカスケード利用ができ、最終的にはバイオマス燃料としてエネルギーに変換ができるこのように、気候変動対策のためにも欠くことのできない多面的な機能で私たちの暮らしを支えている。

木は、生物由来の原材料である。そのため、木の価値を最大限に高めることが必要だが、一方で産地側の状態も考慮しなければならない。
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文=那須清和

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