これらの地域に埋もれている多様な地域資源をしっかりと見つけ、磨き、繋ぎ、発信して、新たな付加価値のある観光資源にする必要がある。そうすることで、人々がそこに観光に来て、お金を落とし、また訪れたいと思ってもらえる「持続可能な観光地」になるのだ。
2009年、私が観光交流推進局長となって最初に実施した観光施策が「岐阜の宝もの認定プロジェクト」だった。
「知ってもらおう、見つけだそう、創りだそう ふるさとのじまん」を合言葉に、県民1人1人が身近にあるさまざまな地域資源を見つけ、磨きをかけ、観光資源化して情報発信をすることで、地域の特性を活かした「誇りを持てるふるさとづくりをめざす」という、地域振興と観光施策を合体させた取り組みだ。
ちなみに、現在までに「小坂の滝めぐり」「乗鞍山麓五色ヶ原の森」「東濃地方の地歌舞伎と芝居小屋」「天生県立自然公園と三湿原回廊」「東美濃の山城」「中山道ぎふ17宿」の6つが、サステナブルな県の魅力の中心である観光資源としての「岐阜の宝もの」に認定されている。
「小坂の滝めぐり」の様子(写真提供:小坂の滝めぐり)
この「宝もの」に認定されると、観光資源化するための体制づくり、組織の維持や運営、そして国内外へのPRなど、人的と物的両面の各種支援が、3年間がっつり受けられるという仕組みにした。
同時にこの事業は、お金を稼ぐという単なる観光商品化を目的としたものではなく、先人から受け継がれてきた自然や文化、伝統や技術などが、観光コンテンツ体験として「地域の光」となり、それらを持続させることの必要性を地元の観光関係者の方たちにも自覚してもらうことが大切だと考えてきた。
まさに「自分の足下には、こんなに素晴らしい観光資源があるんだ」と地域の人々に気づいてもらうことだったのだ。
そうした地域の光となったものが、大きな魅力として国内外の人々から評価され、地域を豊かにできるという成功体験に繋がる必要があると考えた。それがあってはじめて、観光という新産業により、地域資源を持続させ、継続させられるとの思いだった。まさに、いま盛んに喧伝されているサステナブルツーリズムのはしりだったのだ。