米国で広がる「医食同源」思考 日本の「発酵」も注目の的に

日本の酒蔵にて(Getty Images)

昨今、フードテックにおいて、フードバリューチェーン上の川上から川下まで世界の大手企業からスタートアップにおいて斬新なイノベーションの数々が起きているのは知られている通りだ。

次の図は、米AgFunderによる2020年の全世界のフードテック領域への主要ベンチャー投資額の暫定値を筆者が引用し、フードシステムの一連のサイクル上で注目される各テーマを独自で列挙してみたものである。ここに示すように、フードテックと一括りにみても、実に30種類近い領域で食そのものの研究開発が進められている。

では、こうした状況で、“消費者”は何を求めているか。またそのニーズに、どのようなプロダクトやサービスが寄与するだろうか。


出典:米AgFunderの定量データに基づき、アドライト・熊谷伸栄が作成

米国の課題とコロナ禍での変化


米国では長らく、「成人の慢性疾患の増加」と「人口の高齢化の進展」という社会的課題を抱えている。

米Rand社が2017年7月に公表した「RR Review」によれば、2014年時点で米国全人口中の約47%(1.5億人)が、少なくとも慢性疾患を1つ抱えており、うち3000万人は4、5つもの慢性疾患を患っている。また米国における死因の約7割はこうした慢性疾患によるものとされている。

高齢化に関しては、米国調査(U.S. Census 2020)によれば、米国の1.09億人が50歳以上、うち65歳以上が4800万人になる。さらに米Milken Instituteは、2060年には米国内で65歳以上の人口が現在の約2倍の9800万人にまで増えると予測している。既に多くのフードテックのスタートアップが主要ターゲット市場と見据えるミレニアル世代やZ世代と共に、シニア層向けの市場も健康面を意識した機能性等食品市場を牽引していくと見られている。
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文=熊谷伸栄

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