前半の記事で、発酵素材の「麹菌」に着目した話題のフードテックスタートアップをはじめ、日本の国菌たる「麹」において、ペットフードにまで具体例が出ていることに触れてきた。これらは「発酵」活用の一例であって、食に限らず、“クリーン・ビューティー”と言われるオーガニックな素材にこだわったスキンケアや漢方を模倣するサプリ等のアプリケーションも台頭するかもしれない。
ヴィーガン・代替乳製品(代替チーズ)で今や全米でその名が知れ渡るMiyoko’s Creameryも、代替乳製品の中で「麹菌」が巧みに活用されており、健康志向の高いミレニアル世代らをはじめとする消費者への訴求性を高めることに成功している。
ITやロボテックス、最新科学の領域を駆使したフードテック開発が日本でも活況を帯びており、それを反映するようにここ1年で食にまつわる大手企業とスタートアップとのオープンイノベーションが立ち上がり始めている。その流れは有意義である一方、身近な食卓に宿る歴史に「素材」「ネタ」が隠れていると考える。
生の声は「専門家」の予測よりも示唆に富む
麹で作られた日本酒が最初に生まれたのは弥生時代と言われている。その後、醤、酢、味噌といったものが次々と生まれ、平安時代になると麹の胞子だけを集めて乾燥した「種麹」が到来。安土桃山時代から江戸初期にかけて登場したと言われるのが、鰹節やぬか漬けである。
日本に長年住み、それらを口にする欧米人の知人達は「日本古来の発酵や醸造等の持つ力に欧米消費者は好奇心を抱くであろう」と言う。こうした生の声は「専門家」の予測よりも示唆に富む気がする。
以下は、米GFIが公表する、発酵技術を活用して非動物性代替蛋白質の開発に積極的であるとされる世界の大手企業群の代表例である。注目は、日本のスタートアップ、Spiberが名を連ねていること。彼らは、世界的な酵素開発メーカーである天野エンザイムから昨年出資を受けている。
出典: 米Good Food Institute 「State of the Industry Report – Fermentation: Meat, Egg and Dairy」(5/10/2021)より「Companies with fermentation initiatives for animal-free meat, eggs, and dairy」の引用
発酵の歴史が深い日本の智慧に、探求心旺盛で地球環境への意識がたかい昨今の欧米消費者が関心を持つ可能性は高い。無論、それをどのように展開しマネタイズするかは、規模の大小を問わず決して容易な課題ではない。目の付け所、知恵の出し方が試される。しかし、それこそCool Japanな気がするのは筆者だけだろうか。