こうした状態で自己免疫機能強化(Immune Health)への意識は世代を超えて高まっており、そこに新型コロナが追い討ちをかけるような形となった。それらを裏付けるサーベイも公表されている。
例えば、米Sloan and Adams Hutt(2019)によれば、全米人口のおよそ40%程度がいわゆる「健康志向の高い個人」に占められると試算されている。また、米IFICが2020年12月に実施した「2020 IFIC’s Year-End Survey」では、ほぼ3人に1人の割合で「コロナ禍前と比べて食事の選択がより健康を意識したものになった」と回答している。
以下の図を参照されたい。
出典:米IFIC Year in Reviewより引用
フードテック、特にニューフードの領域では、ミレニアル世代やZ世代が、それらを日常に積極的に取り入れていく主たる購入層と見られている。
彼らは「自分のことは自分で考えて判断、行動する」という信念がほかの世代と比べても一段と強い傾向にある。健康意識に留まらず、地球持続性、動物愛護といった課題にも敏感であり、「自分達の食べるものが何なのか、起源はどこで、どのような経路で届いたのか」非常に勉強熱心である傾向が各種全米サーベイ等でもよく現れている。また直接ヒアリングしても感じ取ることができる(日本も同様)。
以下の図は、「食品産業の未来~ネスレの挑戦(原題:NUTRITION FOR A BETTER LIFE)日本経済新聞出版」の引用から作図したものである。この図が示すように、ここ30年あまり世界中で食への取り組みが段階的に進められてきているが、1990年代当初は大手企業による取り組みとして始まり、最近では消費者側にそのイニシアティブが移ってきていると言える。
図の右側が表す「バランスのとれた食生活(≒食の質への探求)」や「未病対策と食(≒医食同源の発想)」が、特にミレニアル世代やZ世代を中心に、洋の東西を問わず、伸びていると考えられる。
出所:「食品産業の未来 ネスレの挑戦」(日系BP社2021年4月16日1版1刷)より引用し、一部修正
ここ数年、Four Sigmaticのように、北欧のレイシの素材を活かしたオーガニックコーヒーのような食材ブランドも生まれており、海外の食文化圏からさまざまな伝統食材が次々と米国進出をしている。
一方、東洋的な食材を活かしたブランドがメインストリームの市場(一部の愛好家だけで愛されるニッチな食品はここでは除外)に登場する事例は相対的に非常に少ない。麹菌の潮流も併せて考えてみると、日本の発酵文化を欧米食習慣に再定義し、全く新しい形で取り入れられる可能性があると思われる。