米国で広がる「医食同源」思考 日本の「発酵」も注目の的に

日本の酒蔵にて(Getty Images)


世界的に今、細胞培養といった合成生物学(Synthetic Biology)をはじめとする「代替タンパク」の開発が勃興しており、投資ファンドや日本を含む大手企業が多額の投資をつぎ込んでいる。一方、自然由来、微生物本来の働きを活かした植物性タンパク源の開発も進んでいる。

米Good Food Instituteのデータが示す通り、直近2年間で発酵(Fermentation)をテーマとするスタートアップの社数と彼らへの投資額が急速に伸びている。注目すべきは、コロナ禍の2020年にその金額が大きく伸びている点だ。


出典: 米Good Food Institute 「State of the Industry Report – Fermentation: Meat, Egg and Dairy」(5/10/2021)より

ここ1年から1年半の間に徐々に注目度が上がっているテーマに、発酵と次世代の代替蛋白質の開発を絡めたものがある。動物の細胞を採取する細胞培養(Cellular Agriculture)技術を駆使したもの、次に植物の素材を採取して疑似的な肉を創る植物性の肉と並び、いわゆる微生物発酵作用を駆使した微生物発酵(Microbial Fermentation)の可能性である。

詳細は割愛するが、従来の自然発酵、バイオマス発酵、そしてNourish Ingredients社等のような精密発酵(Precision Fermentation)に細分化できる。

発酵を活用した代替タンパク及び新しい食材開発領域をはじめ、日用品や“クリーン・ビューティー”領域まで着手し始めている話題の会社には、例えば以下がある。

1. Fybraworks Foods
独自発酵技術に基づく代替タンパク質等の食品開発
プレシード、創業2020年、米ミネソタ州

2. Fumi Ingredients
微生物発酵技術による代替卵タンパク等の代替タンパク源食材の開発
プレシード、創業2019年、オランダ

3. Geltor
高機能性消費財の開発
シリーズB、創業2015年、米カリフォルニア州

一方、大手企業では、オランダのDSMをはじめ、Novozyme、Kerry、DuPontといった企業が積極的に乗り出している(最後の図を参照)。

米GFIによれば、2020年7月末迄の段階で微生物発酵に関連するスタートアップへの投資額は約4億3500万ドルにも上るとされる。これはコロナ禍以前の前年度全体の合計額となる2億7400万ドルを6割以上回っていることから、いわゆる微生物発酵の領域がフードテック市場で着実に成長し続けていることが明白だ。


出典: 米Good Food Institute 「State of the Industry Report – Fermentation: Meat, Egg and Dairy」(5/10/2021)より
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文=熊谷伸栄

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