そもそも、合理的配慮とは──?
私は、人のチガイを認め合い、目的に合わせて「選択肢」を提示しようとする態度や心構えのことだと考えています。
いつものサービスやビジネスを誰に対しても「平等に」同じように提供できるように、誰が来るかも何をしたらいいかもわからないと不安になったり、できないと思う前に、「どうしたらできるだろう」と考えることが合理的配慮を考えることなのだと思っています。
文部科学省のウェブサイトでは、「合理的配慮とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されています。
そして、障害者差別解消法とは「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことで、国・自治体などの役所や会社・お店などの事業者は、障がいのある人に対する「不当な差別的取扱い」が禁止され、「合理的配慮」を行うことが求められています。
出典:内閣府リーフレット『「合理的配慮」を知っていますか?』
「平等」を考えるのに必要な視点
全ての人に対して「同じもの」を提供することが平等だと思われがちで、みんなに平等にしたのだから、これ以上はできませんと断られるようなケースがよくあります。
対処を平等にするのではなく、皆さんがそれぞれ大切にしているサービス、届けようとしているもの、最終的に感じてほしいことを、全ての人が「同様に体験できること」が一番大切な視点だと思います。
研修では、スポーツ観戦時に観客席の前にある防護壁でプレーが見えないと困っている観客のケース等を例に、どう対処すればよいかを皆さんと一緒に考えています。この日も、踏み台やスロープ付きの台を用意する、視界を遮らない防護壁への改修を検討するといったアイデアが挙げられました。
企業はどう取り組めばよいか?
大切なのは、先ずはどういった場面で何ができるかを社内で検討する、そしてできることから行動に移すことです。
研修でも、先ほどのスポーツ観戦時のケースのように、企業で実際に発生し得る場面を想定して、何か困ることがあるか、その課題の解決法は何かを一緒に話し合うプログラムを行っています。
合理的配慮の例としては、意思を伝え合うためにタブレット端末を使ったり、段差がある場合にスロープなどを使いながら補助を行う、といったことが挙げられます。
また、サービスに触れたことのない方、施設を使ったことがない方に、まずは体験してもらって、「どうだったか」尋ねることから始めてみてもよいのではないでしょうか。
バリアフリーに完璧にしてから... ではなくて、まずは色々な人を受け入れてみて、改善点を考える。障がい者雇用であれば、インターンを迎え入れてみて、課題を洗い出すなど、何よりも今より一歩前に踏み出すこと、コミュニケーションを始めることが大切だと思います。