この日の研修テーマについて、こう切り出したのは、講師を務めるパラ・パワーリフティング現役アスリートの山本恵理氏。
日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)は、世界の有力企業500社によるネットワーク「The Valuable 500(V500)」加盟企業を対象に3月、オンライン研修「あすチャレ!Academy ~合理的配慮編~」を開催しました。
2021年5月の障害者差別解消法改正により法的義務化されることになった、この「合理的配慮」について、企業、社会、そして私たち一人ひとりはどう取り組めばよいのか、山本氏に訊きました。
出典:内閣府リーフレット『「合理的配慮」を知っていますか?』
V500企業に「合理的配慮」研修を実施した経緯は?
パラサポでは企業・自治体向けのダイバーシティ研修「あすチャレ!Academy」を2016年から実施しているのですが、障がい者雇用を進める上で、どういう配慮をどの程度する必要があるのか、どのような仕事をお願いするのがよいのかといった質問をよくいただきます。また、合理的配慮が法的義務化され、「何をすればいいのか」との声も聞かれるようになりました。
V500を支援している日本財団の担当者とも意見交換する機会がありました。V500は、2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で発足した、障害者が社会、ビジネス、経済における潜在的な価値を発揮できるような改革を世界500社のビジネスリーダーが起こすことを目的としたネットワーク組織で、53の日本企業も参画しています(2021年6月8日現在)。
すでに日本での加盟企業目標数は達成されたと聞き、今後それぞれの企業がどのように障がい者雇用を進めていくのか、障がい者を含むビジネスモデルにどう発展させていくのかのスタートラインにいると感じました。
「V500にサインしたから、〇〇しなければならない」のではなく、合理的配慮についても、企業にとって、より良い効果があるから積極的に取り入れていくという気持ちで望んでいただきたくて、私たちパラサポからぜひ加盟企業の皆さんにお話させてほしいとお願いをして、今回の研修が実現しました。
「あすチャレ!Academy ~合理的配慮編~」に参加した、V500加盟企業の皆さん
「合理的配慮」について
状況をすごく教科書的に説明すると、2016年4月に施行されたこれまでの障害者差別解消法では、合理的配慮は企業やお店などの事業者については「努力義務」でしたが(国や自治体は法的義務)、昨年の国会で法改正され、事業者に対しても「法的義務化」されることになりました。
「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を“しなければ”ならない。」と改められました。
この流れは社会にとって、とても意味のある大切なことだと思っています。ただ、義務になったからやらなければならない、イヤイヤやらされているというような世の中になったのでは、法律を整備した意味がありません。そういった社会にならないように取り組んでいく必要があると考えています。