その名も「超人スポーツ協会」。共同代表の一人、中村伊知哉氏と、ディレクターを務める安藤良一氏に話を聞いた。
スポーツ音痴が生み出した新時代のスポーツ
超人スポーツとは、テクノロジーで人間の機能を拡張させ、誰もが超人になれるスポーツを開発して楽しむというプロジェクト。
「オリンピックで行われているようなスポーツのほとんどは、19世紀以降の農耕社会にできたものです。21世紀は情報社会と言われ、ITやデジタルに関わる人たちがいろんなものを生み出してきましたが、そういえば新しいスポーツを生み出していないんじゃない? じゃあ何かを生み出そうということになったんです」(中村氏)
思いついたのは、MITメディアラボで客員教授を務めたこともある中村氏をはじめとするITやデジタルに造詣の深い人々。メンバーのほとんどは部屋にこもってパソコンの前にいるような生活を送っており、スポーツに対する苦手意識がある人が多かったそうだ。だからこそ、テクノロジーの力を使って超人となり、スポーツの得意・不得意や、肉体的違い、性別、年齢などのハンディをなくし、誰もが楽しめるスポーツを作ることを目指した。
超人スポーツ協会・共同代表の中村伊知哉氏
「超人スポーツ」発想の源はポップカルチャー
超人スポーツ協会では、これまでに50近い新たなスポーツの開発をサポートしているが、超人スポーツとして協会が認定するにはいくつかの要件がある。ひとつはバーチャルでも何らかのテクノロジーを使っていること。ふたつ目はそのテクノロジーによって人間の身体の機能を拡張していること。そして中村氏らが最も重視しているのは一定の規則に従った「競技」であるということだ。
さらに最終的に超人スポーツとして認定されるかどうかは、単なる鍛錬が目的ではなく、ゲームとして楽しく成り立っているかが重要なのだという。 例えば、「HADO」もそのひとつ。世界的な超人気漫画『ドラゴンボール』に出てくる必殺技「かめはめ波」を打ってみたいという夢を実現した、対戦型のeスポーツの一種だ。
「超人というと、多くの人がマンガやアニメ、ゲームなどポップカルチャーのキャラの名前を挙げたんです。僕らの世代で言えば、野球アニメ『巨人の星』に出てくる消える魔球。ああいうボールを投げてみたいという夢が、知恵とテクノロジーを使えば可能になる。しかも肉体や年齢、性別などの違いに関係なく、誰もが超人になれるわけです」(中村氏)
超人スポーツの1つ「HADO」。AR技術とモーションセンシング技術により人体を拡張した対戦型スポーツで、エナジーボールとバリアを駆使して、相手プレイヤーのライフを削る (c) HADO by meleap inc.