東京2020が遺してくれた「スポーツの未来」というレガシー
中村氏は今後、eスポーツと超人スポーツの世界がだんだん融合していくと考えている。一方で、超人スポーツによって「スポーツ」というこれまでの概念が刷新され、あらゆる人が一緒に同じスポーツをプレーする時代は、5年後、10年後になるかもしれないと言う。
「超人スポーツがもっと普及して世界大会が開かれるようになるには、ふたつのことが必要だと思っています。ひとつは世界のトップレベルの競技にすること、つまりプロフェッショナル化ですね。例えばHADOのプロリーグが出来て、選手が世界的に活躍しているというような状態を作り出すこと。もうひとつは誰もが手軽に楽しく、それを体験して、試合ができるという環境を作ること。同時に進めるのは時間がかかりますが、どちらも大事なことだと思っています」(中村氏)
そして、いつかオリンピックとパラリンピックの選手が一緒に参加できる、超人スポーツの世界的な大会を開催したいのだそうだ。中村氏はその手応えを東京2020で感じていた。
「新型コロナウイルスの影響でほとんどが無観客試合でしたが、それでもちゃんと大会は成立しました。今後は大金をかけて大きなスタジアムを作って観客を一箇所に集める必要はないかもしれない。それが進めば、選手だって一箇所に集まる必要はないかもしれません。ある競技はどこかにセンターがあって、選手は世界中からオンラインで参加する、そんな時代が来るかもしれないという可能性、レガシーを東京2020大会は遺してくれたんだと思います」(中村氏)
「岩手発・超人スポーツプロジェクト」より生まれたロックハンドバトルの制作風景。スポーツクリエーションを通した創造人材の発掘・新しいコミュニティの創出を目指している
超人スポーツのアイデアの源となっている漫画やアニメ、ゲームは日本が世界に誇るポップカルチャーのひとつ。だからこそ中村氏は、ポップ&テクノロジーで自分の体を進化させるという考えは日本が世界の本場だと思っていると言う。
「世界の人が日本は面白いことをやっているんだねって思うようなものをみんなで作っていきたい。みんなで作ってみんなでプレーするのが超人スポーツなので、関心があればどんな形でもいいので参加してほしい」と。
いつか、超人スポーツの世界大会が開催される日が来たら、アスリートではない私達も日本代表として参加できるかもしれない。そんな夢のようなことを実現させてくれる「超人スポーツ」にこれからも注目したい。