五輪史上初、夏季冬季両方を開催した都市となった北京。
今大会、コロナ禍、外交ボイコット、人権問題などによるいつもとは違った緊張の中、外部との接触を完全に遮断するという「クローズド・ループ」方式での運営を貫いた。
カメラマンにとってもタフだったであろうこの「厳格バブル」の内側の世界を、JOC(日本オリンピック委員会)の公式フォトチームとして現地入りし、日本人アスリートが出場した全競技の撮影を行ったアフロの現地デスクを務めた高橋誠氏が振り返る。
意外だった「クローズド・ループ」内側の世界
開会式は2月4日でしたが、3日のアイスホッケー女子の予選リーグから撮影するため、我々は1日に北京入りしました。
中国入国に先立ち、14日前から五輪関係者全員に使用が義務付けられた公式アプリ「My2022」による健康管理を始め、新型コロナウイルスワクチンの接種証明や96時間前までに2度受けなければならなかったPCR検査の結果なども登録しました。
Photo by AP/AFLO
北京首都国際空港に到着してまず行ったのは、入国審査とPCR検査。防護服に身を包んだ職員の案内とMy2022アプリにより、手続きはいたってスピーディーでした。
空港からバスに乗り、ホテルに到着してしばらくすると空港でのPCR検査の結果が出て、無事にチェックイン。高い壁に囲われ、ゲートに警備員が常駐するホテルには関係者のみが宿泊し、市民生活とは隔離されたバス、タクシー、高速鉄道といった指定の交通手段による競技会場への移動だけが許されました。「クローズド・ループ」と呼ばれる厳格なバブル環境でした。
バブル内での活動は、思いのほか順調でした。
毎朝ホテルに設置されたPCR検査場で検査を受けてから各会場に向かうことになるので、移動時間も含め、早起きは必須でしたが、競技会場への入場などはスムーズで、IDカード・手荷物チェックに並ぶ列はほぼ見られませんでした。
手荷物検査はホテルを出る時に済ませ、セキュリティゲートの通過も基本的には顔認証。マスクをしたままでも引っかかることはなく、オペレーションとテクノロジーの活用がとても上手く作用していました。
技術力の高さは他にも、メインメディアセンター食堂の調理ロボットやバーテンダーロボットなど、至るところで感じられました。