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2021.03.02 08:00

脱炭素化で再注目の「水素」 なぜいま期待されるのか

トヨタは水素燃料自動車の開発で世界をリードしている(Getty Images)

脱炭素の解決策としてこれまでも水素は注目されてきましたが、本格的な実装にはいたっていません。活用への課題、そして最新の研究開発とは。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・脱炭素化の解決策として再び注目が集まっている水素ですが、その活用に伴う根本的課題には、いまだ解決されていないものがあります。
・これらの根本的課題は、20年前にも水素のハイプサイクルの妨げとなり、それ以降水素ブームは鳴りを潜めてきました。
・いま、水素に期待が置かれている理由とは?

2020年、水素は、ゼロエミッションを達成するための極めて優れた燃料として大きな復活を遂げました。電化が難しいさまざまな経済分野の脱炭素化も、水素であれば実現できるかもしれないという期待が高まっています。欧州の新型コロナウイルス・グリーン・リカバリーの経済対策や、ジョー・バイデン氏のクリーンエネルギー計画においても、再生可能エネルギーによる水素の生産が焦点のひとつとなっています。しかし、そこには大きな課題が残されています。

水素を手頃な価格で輸送、供給、貯蔵する方法は、いまだ発見されていないため、水素はその力を最大限に発揮できずにいます。

水素は、これまでも注目を浴びては失望を買うというサイクルを繰り返してきました。現在、主導権を握っているのはEUです。しかし20年前、その最大の支持者は米国と日本でした。

当時、水素の活用を実現することができなかったのはなぜでしょうか?

水素活用への課題


水素の物理的特性は、輸送と貯蔵を困難にさせています。水素を極低温にしたとしても、液体水素の体積エネルギー密度はガソリンのわずか25%。気体水素にいたっては、現実的な圧力下ではガソリンの体積エネルギー密度の10%にしかなりません。そのため、水素を容器で運ぼうとすると、さまざまな課題に直面することになります。

1. 圧縮水素

容器に圧縮水素を貯蔵し、運ぶという手段があります。しかし、密度が低い水素には、非常に大きな容器が必要となります。また、圧縮ガスの貯蔵には規模の経済が働かず、容器の大きさは貯蔵するガスの量に比例します。そのため、大量の水素を貯蔵するには、重くかさばる容器が必要なのです。

数字で見ると、その評価は壊滅的です。炭素繊維を用いた複合材料など高価で超強力な素材を容器に使用しても、容器の総重量のうち水素燃料が占めるのはたった5%。安くも、小さくも、軽くもないということは、地上を走る車両にとっても不利ですが、燃費を向上させるため抗力を減らすよう、軽くて小さいことが求められる飛行機にとっては大きな課題です。

重量を車や飛行機ほど気にせずに済む海洋輸送においてさえ、圧縮水素燃料の大きさは深刻な問題をもたらします。今日の通常のディーゼル船において、貯蔵量に占める燃料の割合は約4%。しかし、圧縮水素を使用するとなると、燃料が船の貯蔵量の40%を占めることとなり、商品を大量に運べるという船の能力が損なわれます。

2. 極低温液体水素

液体水素を容器に入れ、輸送するという手もあります。そうすれば、加圧に耐え得る高価で重い容器は不要です。しかし、問題は、水素を液化するには極低温の-250度まで冷却する必要があるということ。この温度が低くなりすぎないよう保つためには、水素の一部を絶えず気化(ボイルオフ)させる必要があるため、低温化は、コストがかかり維持が難しい方法なのです。
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文=Tony Pan, Chief Executive Officer, Modern Electron

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